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自分あての「寄付」17億円 政党交付金はなぜ候補者個人に渡せるのか

演壇を中心に、封印した封筒と透明な帳簿を向かい合わせたAI生成の抽象イラスト

しんぶん赤旗は2026年9月22日、2024年10月の衆院選で、自民党の小選挙区候補217人が、自ら支部長を務める政党支部から自分あてに「寄付」を受けていたと報じた。総額は17億3238万8998円で、1人平均は798万円になる。同紙が今回集計した寄付は、税金を原資とする政党交付金からの支出として報告されたものだ。支部のあらゆる資金が交付金だけで構成される、という意味ではない。個別取引の適法性は本稿で認定せず、この報道で示されたお金の流れを、制度の側から問いの形で確かめていく。

何が報じられたのか?

赤旗は、自民党の選挙区支部について、党を通じて総務省に提出される政党交付金の支部報告書などの2024年分を調べた。以下の役職名は、2024年の寄付当時ではなく2026年9月22日の報道時点の表記である。確認できた265人のうち、8割を超える217人の支部が、公示日の10月15日の前後に、支部長である候補者本人へ「寄付」の名目で支出していたという。金額は500万円、800万円、1000万円といった単位が多い。最多は2000万円で、山下貴司法相ら8人が該当する。山下氏は公示直前の10月10日に受け取っていた。

高市早苗首相の支部は、公示後の10月18日と25日に各200万円を寄付するなど、7回に分けて計736万4487円を本人に渡していた。最後の12月13日の支出は7万4487円という端数で、党本部から受け取った3300万円をちょうど使い切る形になっている。首相と、衆院議員の閣僚14人のうち8人の支部が、同じように自分あての寄付をしていた。

政党交付金とは、どんなお金なのか?

政党交付金とは、国会議員が5人以上いるなど一定の条件を満たす政党に、国が税金から毎年配る資金である。政党助成法にもとづき、総額は国民1人あたり250円を目安に計算される。企業や団体からの献金に頼らない政治を目指して、1990年代に導入された。受け取るかどうかは各党が決められ、共産党は制度そのものに反対して受け取っていない。

交付金は党本部に入り、そこから各地の支部へ配られる。政党助成法4条は、国が交付に条件を付けたり使途を制限したりしないと定める。同時に政党には適切な使用を求めており、他の法律の禁止事項まで免除する規定ではない。何に使ったかは使途等報告書などに記載され、公表の対象になる。今回の報道は、この公開された報告書を1件ずつ読み、支出先に支部長本人の名前が並んでいる例を数え上げたものだ。

政治家個人への寄付は、禁止されていたのではないのか?

候補者個人への金銭等の寄付を読む際は、寄付した主体と取引の時点を分ける必要がある。現在の政治資金規正法21条の2は、候補者の政治活動に関する金銭等の寄付を原則禁止し、選挙運動と政治団体への寄付を除いている。これに対し2024年当時は、政党がする寄付について旧21条の2第2項の例外もあり、選挙運動だけに限って許されていたわけではない。2024年2月27日の衆院で総務省もこの仕組みを説明している。当時の東京都選管資料では、政党・支部から候補者への寄付に量的制限はないとされているが、匿名や外国人などの規制、実際の目的・記録まで不要になる意味ではない。

政策活動費の廃止と、選挙運動に関する寄付は区別しなければならない。また、2024年の取引を現在の条文だけで判断することもできない。記事で参照した東京都の寄附制限パンフレットは2018年1月発行で、現行法の説明として無条件に引用すべきではない。現在の政治資金規正法21条の2は、候補者の政治活動への金銭等の寄付について選挙運動を除く規定を置くが、個々の取引には当時の法令、寄付者の種類、目的、日付、記載と実際の支出を合わせて確認する必要がある。「適法の可能性が高い」とする従来の評価は撤回する。

なぜ、わざわざ「自分に寄付」するのか?

ここが、この件でいちばん誤解を生みやすいところだ。候補者が支部長を務める政党支部は、法律上は候補者本人とは別の「政治団体」である。一方、選挙運動では、候補者自身が就任する場合などを含めて選任された出納責任者が会計帳簿を備え、収支を管理して「選挙運動費用収支報告書」を選挙管理委員会に提出する。公職選挙法180・185・189条に定められた仕組みである。支部の口座から選挙の口座へお金を移すと、書類の上では「支部から候補者への寄付」と記録される。

「自分に寄付」という記載は、本人が支部長を務める団体から候補者への支出を指す。しかし、支部長と候補者が同一人物であっても、支部の会計責任者と選挙の出納責任者まで同じ人とは限らず、無条件に資金を付け替えてよいわけでもない。寄付者・受領者の法的な単位と、選挙運動の収入・支出を別々に確認する必要がある。個人への記載だけで私的流用と決めつけず、逆に選挙の名目だけで適法と認定しないことが重要だ。

では、何が問題として残るのか?

問題は、お金の行き先を追う書類が二つに分かれていることにある。支部から本人に渡った事実までは、総務省に出される使途等報告書で分かる。しかし本人に渡ったあと、それが選挙のどの支出に使われたか、使い残しがあったかは、都道府県の選挙管理委員会に出される選挙運動費用収支報告書を突き合わせないと見えない。二つの書類は提出先も公開の方法も違い、一般の人が照合するのは簡単ではない。赤旗が「チェックできない」と批判したのは、この継ぎ目を指している。

数字からは何が読み取れるのか?

編集部で報道の数字を計算し直した。17億3238万8998円÷217人=約798万3359円で、「平均798万円」は万円未満を丸めた表現である。217÷265=約81.9%は、同紙が確認した265人の中での割合であり、候補者全体や全政党の割合ではない。2000万円÷3300万円=約60.6%、736万4487円÷3300万円=約22.3%という比較も、報道された金額を前提にしている。年末の端数支出だけで、年内に消化する意図や実際の使途を確定することはできない。

この話は、どこへつながっていくのか?

政党交付金をめぐっては、中道改革連合が議員1人だけを残して交付金を受け取ろうとする方針も、同じ時期に批判を浴びている。どちらも、法定の条件を満たすかという確認と、税金を原資とする流れを外から追えるかという問題の両方が論点になる。私たちが問うべきなのは、特定の政治家の損得よりも、二つの帳簿を一つにつなぎ、誰でも最後まで追える形にできるかどうかである。

独自の視点――二つの帳簿をつなぎ二重計上を避ける

政治資金に関する寄付は、政治資金規正法と公職選挙法で扱いが異なり、選挙運動に関する寄付には例外規定もある。集計記事の金額だけで結論づけず、政治団体の収支報告書、候補者側の選挙運動費用収支報告書、提出先・公開時期を突き合わせることが必要だ。今回の論点では、誰が寄付者か、候補者個人に直接渡ったのか、団体を経由したのかを分ける。

公開制度の目的は、金額の多寡だけでなく資金の流れを有権者が追えるようにすることにある。同紙の集計と、編集部が原本を全件再集計した結果は区別する。元の報告書が公表済みであることと、本稿が受領後の支出まで照合できていることも同じではない。訂正報告も含めて内訳を確かめた際には、根拠とともに更新するのが適切だ。

また、寄付の受領者や支出先の表記は、報告書の記載単位で確認する。略称や集計方法の違いがあるため、同じ資金を二重に数えないことも重要である。

政治資金規正法と報告書の区分を基に作成した編集部の照合手順。個別取引の確認済み表ではない

何を照合するか二つの帳簿をつなぐ手がかり
支部側の支出相手方、支出日、金額、名目、交付金との関係
候補者側の収入同じ寄付者、受領日、金額、選挙の区分
候補者側の支出支払先、目的、日付、残額の処理
集計の範囲確認できた報告書数、未確認分、訂正報告の有無

同じ資金が支部から候補者へ移り、その候補者から印刷業者へ支払われた場合、資金の経路として二つの支出を追うことと、原資の総額として二重に足すことは別である。寄付額が大きい人ほど私的利益が大きいとも、この集計だけでは判断できない。制度への賛否を述べる前に、調査がカバーした母集団、最終支出先、残額まで確認することが、検証できる批判につながる。

追記・訂正(2026年10月17日):2024年当時の政党から候補者への寄付には、選挙運動とは別に旧法の政党例外もあったことを補った。出納責任者の役割、支部報告書の提出経路、報道時点の役職表記も明確にした。
訂正・補足(2026年10月9日):報道の元記事と現行法を確認し、平均・割合を再計算した。参照していた東京都パンフレットが2018年版であることを明記し、個別取引が適法の可能性が高いとする評価と、端数支出から目的を推測する説明を撤回した。金額・人数は赤旗の集計であり、全件の報告書原本と受領後の支出の突合は未完了である。

[文・構成=編集長 麻生 矩暉]

出典とメモ

2026年10月9日、赤旗の調査記事原文の集計範囲と公表額を確認した。これは調査報道の原文であって、全件の使途等報告書原本を本稿が再集計した結果ではない。現行の政治資金規正法21条の2と、旧版の東京都パンフレットは区別した。10月17日には、2024年2月27日の衆院予算委員会第二分科会での総務省答弁で旧法の政党例外を確認した。東京都選管の2024年版『収支報告書の手引』は同年の都知事選などの資料であり、衆院選の個別取引の認定資料としてではなく、帳簿と寄付制限の一般的な説明に用いた。公職選挙法180・185・189・192条、政党助成法4・17・18条も照合した。比較表は法令と帳簿区分を基に作成した編集部の手順で、平均・割合は報道値による編集部計算である。