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永住許可20万円、パスポート8900円に 高市政権が進める負担の付け替え

無記名の書類ケースと封筒で手続費用の確認を描く概念イラスト

永住許可手数料20万円と、10年旅券のオンライン申請8900円という改定は、方向が違うだけでなく対象と適用日も違う。旅券は7月1日以降の申請分から改定され、在留許可手数料は10月1日以降の申請分が基準となる。許可や交付の日だけで新旧の料金は決まらない。本稿は当初の政令案に基づく説明を、10月9日の確認で申請時点と旅券の公表額を分ける形に補足した。

1. 何がどう変わるのか 手数料の一覧

具体的な金額を並べてみる。永住許可の手数料は窓口対応のみで1万円から20万円になる。在留期間の更新・変更手数料は、これまで在留期間の長さにかかわらず一律6000円だったものが、在留期間に応じて1万円から7万5000円までの段階制に変わる。永住許可の手数料引き上げは2026年10月1日からの施行を予定しており、値上げ幅の大きさはこの記事で取り上げる数字の中でも際立っている。

外務省の表で、18歳以上の10年旅券はオンライン15900円から8900円、窓口16300円から9300円へ改定された。18歳未満の5年旅券はオンライン4400円、窓口4800円である。従来は未成年のオンライン料金を申請方法の区別なく紹介していたため、修正する。18歳以上の5年旅券は廃止されるが、残存有効期間同一旅券は氏名等が変わった場合などの手続であり、自由に選べる5年旅券の代わりという意味ではない。

2. 永住許可が「20倍」になる理由

在留許可の手数料は、手続、許可される期間、申請方法、減額・免除の条件により確認する必要がある。永住許可が20万円という通常額でも、全ての人が例外なく同額を納めるという意味ではない。また永住者は在留期間が無期限であることと、在留カード等の更新が不要であることは別だ。永住資格だけで社会保障の個々の給付要件がなくなるという従来の説明も削除した。

3. パスポートが安くなった本当の財源

外務省の旅券手数料資料は、従来旅券手数料で賄っていた邦人保護経費の一部を国際観光旅客税から充当すると説明する。永住許可の手数料収入を直接回すという説明ではない。ただし国際観光旅客税は現在一律1000円というわけではなく、7月1日以後の出国は原則3000円である。同日より前の一定の運送契約に係る出国には1000円の経過措置がある。従来の1000円という説明は訂正する。

4. 「相応の負担」という言葉が指すもの

在留手数料への「相応の負担」という政治的な説明と、料金が実際の審査原価にどれだけ対応するかの検証は別である。手数料が20倍だから審査費用も20倍になったとはいえない。行政サービスの費用と収入を比べるには、制度別の費用、徴収件数、減免、収入の使途をそろえる必要があり、この料金表だけでは確定できない。

5. 更新・変更の手数料も段階制に変わる

在留資格の更新や変更にかかる手数料は、これまで在留期間の長さにかかわらず一律6000円だった。政令案では、在留期間が3か月以下なら1万円、1年なら3万3000円、3年以上5年未満なら6万4000円、5年以上なら7万5000円という具合に、期間が長いほど手数料も上がる段階制に変わる。長期の在留を望む人ほど負担が重くなる設計であり、日本での定住を計画する人に与える影響は、単発の観光や短期の就労より大きい。出入国在留管理庁は2026年7月3日から8月2日まで、この政令案に対する意見公募を実施しており、就労者や技能実習の関係団体からは負担の重さを懸念する声も寄せられている。

6. 制度改正の先にあるJESTA導入

今回の一連の見直しには、もう一つ先の計画がある。政府は令和10年度中をめどに、電子渡航認証制度「JESTA」の導入を目指している。JESTAとは、査証免除の国や地域から日本に入国する外国人に対し、渡航前にオンラインでの事前登録と手数料の支払いを求める仕組みで、米国のESTAや欧州のETIASと同じ発想の制度である。手数料体系の見直しは、この新制度を運用する体制づくりと歩調を合わせて進んでいると見ることができる。出入国管理の手続き全体を、対面中心から審査とオンライン手続きの組み合わせへと移していく、より長い流れの一部として今回の改定を位置づけると理解しやすい。

7. すでに日本で暮らす人たちへの影響は?

値上げの影響を最も受けるのは、これから来日する人よりも、すでに日本で長く働き、家族を持って暮らしている外国人である。東京新聞の取材に対し、子どもを育てながら日本で暮らす女性は、更新のたびに数万円の負担が重なることへの不安を語っている。永住許可を目指す世帯や、複数の家族分をまとめて更新する世帯ほど、手数料の総額は大きくなる。一方で政府は、手数料収入を審査体制の強化に充てることで、在留審査の透明性や迅速化につなげたいとしている。負担の増加と行政サービスの質の向上が見合うものになるかどうかは、10月の施行後、実際の審査期間や運用の変化を見なければ判断できない。

比較表と検証方法

手続確認した料金・時期
永住許可改正後の手数料体系(2026年10月1日以降)
旅券オンライン申請の手数料改定(2026年7月1日以降)

出入国在留管理庁・外務省の公表資料を基に編集部作成。

比較では、旅券は外務省の手数料表と適用申請日を、国際観光旅客税は国税庁の税率と経過措置を直接照合した。在留許可の現行案内は公式検索結果で申請日の境界を確認したが、ページ本文の取得が制限されたため、個別の減免や全期間の料金を完全に検証したとはしない。実際の納付は最新の公式案内と許可通知に基づいて確認する。

独自の視点――旅券の手数料と出国の税を相殺しない

外務省「旅券手数料の改定」を基に作成。7月1日以降の申請分

10年旅券・18歳以上改定前改定後減額
オンライン申請15,900円8,900円7,000円
窓口申請16,300円9,300円7,000円

いずれも減額は7000円だが、減額率はオンライン7000÷15900=約44.0%、窓口7000÷16300=約42.9%と違う。窓口とオンラインの差は改定前後とも400円である。一方、出国税は通常1回に3000円で、十年旅券の発給1回と同じ回数で比較してはいけない。

仮に以前の1000円と現在の3000円の差だけを置くなら、出国1回につき2000円の増加となる。4回なら8000円だが、これは一定条件の単純計算で、7000円の旅券減額を取り戻すための旅行回数という意味ではない。既に有効な旅券を持つ人、経過措置や非課税の人、渡航の回数が違う人では負担は異なる。申請手数料と出国時の税を、一つの家計の値引き額として相殺しないことが比較の要点である。

訂正・補足(2026年10月9日):国際観光旅客税を原則3000円と経過措置に修正した。未成年旅券の申請方法ごとの料金を区別し、永住資格と在留カード・社会保障の手続を混同する説明を削除した。在留許可の全区分・減免の詳細は公式本文を取得できず、個別確認が必要である。

[文・構成=編集長 麻生 矩暉]

出典とメモ

2026年10月9日、外務省「旅券手数料の改定」の料金表と適用日、国税庁・国際観光旅客税の概要の3000円と経過措置を確認した。比較表は外務省資料を基に作成。減額率と回数別の例は編集部計算である。在留許可の申請日基準は入管庁の現行手数料案内の検索掲載内容を確認し、公式本文には取得制限があったことを明記する。