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2027年度概算要求143兆円を読む 事項要求と比較基準の違い

国会議事堂を背景に、積み重ねた資料、硬貨と虫眼鏡を置いたAI生成イラスト

2027年度の一般会計の概算要求等は、143兆656億円となった。8月30日の初稿で扱った140兆円前後という締切前の見通しではなく、財務省が9月4日に公表した集計である。それでも、これは政府が使うと決めた予算でも、将来の支出の天井でもない。金額を付けた要求と、項目を示して後の編成で検討する事項要求を分け、数字が埋まるまでの過程を読む必要がある。

1. 143兆656億円を、三つの欄に分ける

財務省の原表は、2027年度の概算要求額、要望額、「強く豊かな日本」投資枠を別の列で示している。単位は億円だ。三列を足した計が143兆656億円であり、狭い意味の概算要求額だけの数字ではない。本稿ではこれらを合わせたものを概算要求等と表記する。

財務省9月4日公表の一般会計概算要求等の表を基に作成。要求・要望・投資枠の別列を合計した値で、事項のみの要求は注記される。

2027年度の区分金額億円での表記
概算要求額128兆967億円1,280,967
要望額2兆7959億円27,959
「強く豊かな日本」投資枠12兆1730億円121,730
計143兆656億円1,430,656

検算は1,280,967+27,959+121,730=1,430,656となる。投資枠はこの計の中に含まれているので、143兆円にさらに12兆円を上乗せしてはならない。一方、原表はエネルギー対策特別会計にも投資枠の要求があると注記する。一般会計の表を国の全会計・全施策の総額と読み替えることもできない。

表の注記は、各府省からの要求額をそのまま集計し、精査の結果によって変動があると説明する。つまり計数が公表されたことと、政策の採用や予算成立が確定したことは別である。要求額の合計を実際の支出額として扱わないのが、最初の読解の境界となる。

2. 20.8兆円増と2.5兆円増は、比べる相手が違う

2026年度当初予算は122兆3092億円である。143兆656億円との差は20兆7564億円、当初予算を分母とした増加率は約17.0%となる。旧稿の20兆円以上多いという計算自体は合う。しかし、恒常的な施策を補正から当初へ移す方針の下では、比較対象を当初だけに限ったことも明示したい。

財務省の概算要求等の表と参考表を基に作成。増加率は編集部計算。どちらも予算額と要求段階の額の比較で、支出実績の前年比ではない。

比較に使う基準基準額2027年度要求等との差
2026年度当初だけ122兆3092億円20兆7564億円・約17.0%増
2025年度補正+2026年度当初140兆6126億円2兆4530億円・約1.7%増

参考表の2025年度補正は18兆3034億円で、2026年度当初と足すと140兆6126億円となる。この基準との差は2兆4530億円、約1.7%だ。9月4日の財務相会見で示された約2.5兆円増という説明と整合する。約141兆円という丸めた基準から再計算するより、原表の桁を使う方が誤差を抑えられる。

ただし、後者は別の二年度の補正と当初を組み合わせた政策上の比較であり、2026年度の一年分の最終予算や決算ではない。移し替えの方針を読むには役立つが、全ての増加が帳簿上の付け替えだったという証明にはならない。個別事業が補正からどの欄へ移ったか、数量や単価が変わったかは、別に追う必要がある。

3. 事項要求は、採用済み事業の空欄ではない

7月30日の概算要求方針は、重要政策について必要に応じて事項のみの要求を認め、予算編成過程で検討するとしている。事項要求は、金額を伴わず事柄を示す要求である。旧稿は「やることは決まっている」と説明したが、提出したことだけで事業の採用、規模、実施条件が決まったとは言えない。

9月4日の集計表は、中東情勢等対応予備費などを事項要求として注記する。財務省所管の8月28日資料でも、ウクライナ支援、防衛力強化資金への繰入、追加の予備費等が事項要求として列挙される。金額がない項目をゼロ円の事業として読むのも、未計上の巨額支出が必ず発生するものとして読むのも誤りだ。

投資枠に要求上限を設けないという方針は、全経費に無条件の上限撤廃を適用したという意味ではない。同じ閣議了解は、その他の経費について前年度当初相当額の範囲内の要求と、その額の20%の範囲内の要望を定める。年金・医療等や防衛力整備計画対象経費にも、それぞれ異なる取扱いがある。

上限のない投資枠が何兆円を押し上げたか、事項要求が何兆円を表から隠したかは、枠が存在するだけでは計算できない。旧稿の総額と実際の支出の距離を必ず広げるという結論は改める。制度の仕組みと、その仕組みが今回生んだ結果を分けることが必要である。

4. 国債費36.6兆円は、全額が利息ではない

国債費36兆6386億円は総額の約25.6%である。財務省の内訳は、債務償還費20兆25億円、利子及割引料16兆5888億円、国債事務取扱費473億円となっている。200,025+165,888+473=366,386億円と検算できる。国債費を全額、利払いの増加によるものとして説明してはならない。

利子及割引料は国債費の約45.3%で、前年度当初からの増加額として表に3兆5516億円が示される。表示された新旧額を引くと165,888-130,371=35,517億円で、増加欄と1億円違う。資料は各計数の億円未満を四捨五入すると明記している。表の誤りを認定せず、未丸め値を取得していないことと丸めの注意を残す。

利息の見積りは市場金利だけでなく、債務の構成、借換えや新規発行、計上の前提にも左右される。金利が上がれば国債費の全てが同じ比率で自動的に増えるわけではない。また、今年度当初予算から翌年度要求への差は、今年すでに払った利息が増えたという実績でもない。増加の全額を一つの原因に割り振る分析は本稿では行わない。

5. 防衛の約9兆円と約8兆円は、足す数字ではない

防衛省の8月31日概要は、現行の防衛力整備計画を踏まえる事業を歳出ベース約9兆円、契約ベース約8兆円と示す。一方、三文書改定に左右される事業等は事項要求として、編成過程で検討する方針だ。総務的な一般会計集計表の防衛省欄は8兆8432億円であり、概数の約9兆円と対象・表示の桁を区別して読む。

歳出は当該年度の支払に関する額、契約は将来年度分を含む契約に関する額で、同じ事業を別の時間軸で捉える。両者を足して17兆円の防衛費とすることはできない。旧稿の10兆円を超える可能性という記述は、今回確認した公式資料から最終額を算出できないため、確定的な見通しとして用いない。

9月4日の統合幕僚長会見は、新しい戦い方、持続的な対応能力、防衛力の基盤という三本柱と、三文書改定の議論を踏まえた事項要求の検討を説明している。政策側の説明が確認できたことと、全装備の価格や契約条件、最終予算が確定したことは別だ。改定を控えることが全省庁の事項要求の唯一の理由でもない。

独自の視点――空欄を埋めた後も、事業を追えるか

編集部は、事項要求の透明性を項目数だけで評価すべきではないと考える。重要なのは、要求時に示した事業が、予算案ではどの名前・範囲・年度へ移り、いくらになったかを追えることである。単純な総額の差では、既存事業の削減、新規事業の追加、補正からの移行、事項要求の金額化が相殺されてしまう。

検証では、要求時の項目に対応する事業名、決定した金額、複数年度の計画、当年度に執行できる範囲、後に測る成果を一組として記録したい。例えば同じ名前で増額されても、期間が延びたのか、数量が増えたのか、単価が上がったのかを分ける。これは編集部の検証提案であり、未取得の個別査定記録を確認した結果ではない。

9月4日の投資枠の考え方も、成長への寄与、民間投資の誘発、計画の明確化、進捗と成果の監視、見直しの仕組みを求めている。効果を検証するという政府の方針を、そのまま効果があったという実績に置き換えてはならない。143兆円の大きさに驚くだけでなく、金額が付いた後に約束と結果を結び付けられるかまで見る。それが空欄を単なる余白で終わらせない視点だ。

訂正・補足(2026年10月11日):締切前の140兆円見通しと公表後の143兆656億円を整理し、要求・要望・投資枠の合計と比較基準を原表で確認。国債費と利子及割引料、歳出と契約を区別した。事項要求の事業採用済みという説明、要求上限の全経費への一般化、最終防衛費10兆円超の推定、総額の増加原因・政策効果の断定を改めた。旧注意書きは当初の見通しについてのもので、今回の公表値や最終予算とは分ける。

更新(2026年10月6日):防衛費の事項要求を扱った関連記事1本の内容をこの記事に統合しました。締め切り後に公表された概算要求の総額と内訳、事項要求が多い理由を加えました。

[文・構成=編集長 麻生 矩暉]

出典とメモ

  • 財務省9月4日・一般会計概算要求等PDFの1ページの1280967/27959/121730/1430656億円、2026当初1223092、国債費366386、防衛省88432、事項要求・丸め・精査の注記、2ページの2025補正183034と合計1406126を原表視認。3ページの財投要求は一般会計計に足していない。比較表は同原表を基に作成。独自計算207564/1223092=16.9704%、24530/1406126=1.74451%、国債費366386/1430656=25.6097%。実支出の前年比ではない。
  • 7月30日閣議了解で事項要求、投資枠、その他経費の要求・20%要望、8月末期限を照合。9月4日・投資枠の考え方で効果、複数年度計画、進捗監視と見直しを確認。財務相9月4日会見の当初+補正との約2.5兆円差の説明と照合。
  • 財務省所管8月28日公表の国債費内訳・事項要求例を照合。償還200025+利子割引165888+事務473=366386億円、利子等比165888/366386=45.2768%。表示値の差35517と公式比較欄35516は1億円差があり、未丸め値は未取得。資料の億円未満四捨五入を明記する。
  • 防衛省8月31日概算要求概要の紙面3ページ/PDF4ページを視認し、歳出約9兆円・契約約8兆円、現行計画と三文書改定に左右される事業等の区分を照合。統合幕僚長9月4日会見の三本柱・事項要求への回答を確認。全装備品目・契約・法改正・将来の採用と実施成果は未検証。
  • 旧参照の共同通信Yahoo配信、日経の防衛要求報道、NHK、時事通信、時事通信の元記事、財務省年度一覧は参照履歴として保持。全旧報道本文、全府省の事項要求・個別査定・全会計純計・決算・事業の移し替え額・全増加原因は未確認。2026年10月11日確認。独自の視点は編集部の原表比較と検証提案で、将来予算や効果の確定ではない。