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生活保護の医療扶助 「半分」の費用と受診経路の見直しを読む

診察室で書類を見ながら話す医師と患者のAI生成イラスト

生活保護費の約半分が医療扶助に使われる。その数字は重いが、半分が無駄な医療だという意味ではない。厚生労働省の公式説明では、令和5年度の生活保護費は約3.6兆円で、医療扶助が半分を占める。受診先をあらかじめ定め、別の医療機関には原則紹介を求めるという見直しも報じられた。本稿では、その報道案と、現在の受診手続き・適正受診の通知を分け、費用を抑えることと必要な医療につなぐことをどう両立させるかを考える。

1. 検討案の報道と、現行の手続きを分ける

日常的な受診先を福祉事務所が定め、他の医療機関を受診するときは紹介を原則とする案は、従来稿が参照した日本経済新聞の報道に基づく。本稿で確認した公式通知だけでは、この案の最終的な制度化、全員への適用、例外の具体的な範囲まで確定できない。報道にあった年内の取りまとめという見通しも、そのまま施行日とは読めない。

一方、現行制度にも福祉事務所による医療の委託や選定の手続きはある。医療扶助運営要領は、医療要否意見書の作成先を選ぶ際に本人の希望を参考にし、居住地に比較的近い指定医療機関を選定することなどを示している。一定の大規模病院については紹介のほか緊急時や個別事情等の扱いもある。自由な受診を今回初めて行政が管理する、という二分法では現行制度を説明できない。

2. 約半分の費用は、削減できる額ではない

医療扶助は生活保護の中で必要な医療を給付する仕組みである。厚労省の制度案内では医療サービスの費用を直接医療機関へ支払い、本人負担はなしと説明している。ただし、ここでの負担の説明を、制度対象外の支出も何でも無料になるという意味に広げない。個別の受診や給付の範囲は福祉事務所等への確認が必要であり、本稿は診療や受診の要否を判断するものではない。

約3.6兆円と約半分という概数から、正確な医療扶助額を逆算することも避けたい。医療扶助には外来だけでなく入院等も含まれるため、外来の受診経路を変える案の財政効果を、この総額で代表させることはできない。対象となる支出の範囲と、そのうち見直しで変わる部分を特定して初めて、比較の分母が定まる。

高齢者や傷病を抱える人が制度を利用していることは医療の必要性を考える手掛かりだが、受給者構成だけで費用の割合が将来も変わらないと断定はできない。入院の長さ、診療内容、地域の医療供給等も関わり得る。支出が大きいという事実、支出の原因、削減できる金額は三つの別の問いである。

3. 15日・40日は、受診を禁止する上限ではない

頻回受診への対応は2026年3月31日付の新しい通知に整理され、4月1日から適用された。この通知により従来の平成14年の頻回受診通知は廃止されている。従来稿は旧通知を引用していたため、現在確認できる通知へ参照先を改める必要がある。

新通知のレセプトを使う把握方法では、同一傷病・同一月・同一診療科目で15日以上、かつ把握月と前の二か月を合わせ40日以上という条件を使う。しかし、これは受診状況を確認する対象を抽出する段階である。初診月や短期的・集中的な治療を除き、治療した医師や嘱託医が必要以上の受診と認めることなどを踏まえ、指導対象かどうかを判断する。

厚労省2026年3月31日通知の第2を基に作成した条件例(実在患者の記録ではない)

同一傷病・診療科での仮定例把握月の条件三か月合計読み方
把握月15日、前月13日、前々月12日15日以上40日数値上の抽出条件を満たす。過剰と確定したわけではない
把握月14日、前月13日、前々月13日15日未満40日この把握方法の当月条件を満たさない。別の必要性確認を否定する意味ではない

計算は15+13+12=40、14+13+13=40である。同じ合計でも、月ごとの条件で抽出結果が変わる。大切なのは、40日という数字が治療の不要を決める境界ではない点だ。集中的な治療が必要な場合もあり、回数の多さだけで本人の責任や不正と結び付けるべきではない。

4. 現行の対応も、事後点検だけではない

新通知には、オンライン資格確認の実績ログを活用し、受診状況を早く把握する方法もある。同じ月に同じ医療機関で15日以上資格確認が行われた場合を頻回受診の傾向として把握し、理由を確認する仕組みだ。こちらは同一傷病・診療科のレセプト抽出と同じ指標ではない。資格確認の実施状況を、診療内容の必要性の判断と混同しないことが重要になる。

このログを使う対応は2026年度には任意とされ、地域の導入状況等を踏まえる。全国で同じ方法に一斉に切り替わったわけではない。したがって、旧稿の「現行制度は全て事後指導、見直し案は初めて事前設計」という整理は粗い。現在の委託手続き、早期把握、医学的な必要性の確認、報道された紹介原則の案は、それぞれ役割を区別して比較すべきだ。

5. 手続きで減る費用と、増える負担を同時に見る

受診経路を整理することで情報共有が進む可能性はある。他方、遠い医療機関への移動や紹介の待ち時間が増える可能性もある。いずれも本稿で測定した効果ではなく、制度設計を評価するときの仮説である。情報が一か所に集まることと、必要な診療にたどり着けることは、必ずしも同じ成果ではない。

例えば、既に複数の診療科で治療を続ける人に新しい紹介手順を加える場合、本人、主治医、福祉事務所の誰が何を確認するのかが重要になる。これは設定例で、実際の受給者を取材した体験ではない。既存の診療関係を維持する条件や、希望する医療機関が遠い場合の判断手順を確認しないまま、管理の強化は支援の充実と同じだと結論することはできない。

必要な診療が遅れれば後の入院費が増える、という可能性も検証対象であり、この案で実際に増えると断定するものではない。費用だけを見るなら、対象の外来費、紹介等の事務費、交通や待ち時間、後の医療費を区別して比較する。患者の健康状態や診療の継続は、金額とは別に確かめなければならない。

独自の視点――受診が減ったことより、必要な医療が残ったか

編集部は、受診回数や支出が減ったという結果だけで改革を評価すべきではないと考える。根拠は、現行通知が数値による抽出と医師等による必要性の判断を分けていること、医療扶助総額には外来以外も含まれることである。これは公式資料の結論ではなく、その区別から導く編集部の分析だ。減った受診が不要なものだったかは、回数の引き算だけでは分からない。

評価の順番は、まず必要な診療を継続できたか、次に不要な重複等を減らせたか、最後に事務負担まで含めて費用がどう変わったかである。比較では年齢や傷病、地域の医療供給などの条件もそろえたい。条件を調整したうえで診療の継続や健康状態を保ち、事務費を含む対象費用が下がれば、有効性を支持する材料になる。反対に支出が下がっても未受診や治療の中断が増えれば、成功とは呼べない。

制度は入口を狭くすることでも、入口で迷う人を支えることでも、受診経路を変えられる。その二つを分けるのは「かかりつけ」という名前ではなく、本人の希望や医学的な必要性がどう扱われ、行き先を変更できる条件があるかである。約半分という大きな費用を出発点にしながら、最後は必要な医療を失っていないかを問う。その順番を保つことが、財政と支援を二者択一にしない物差しになる。

訂正・補足(2026年10月9日):従来の注記は受診経路の見直しを検討段階としていた。今回、現行通知との違いを明示し、旧頻回受診通知の引用を更新した。15日・40日の抽出条件と指導対象の判断を区別し、費用構成が続くとの断定と、全員に紹介手順が適用されるとの断定を修正した。紹介原則の検討案の最終決定、施行日・適用範囲、削減効果は本稿では未確認である。

[文・構成=編集長 麻生 矩暉]

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