衆議院の定数を465から420へ減らすという数字は同じでも、2025年案と2026年案は同じ法案ではない。旧稿は小選挙区25・比例20の削減を、2026年の議論にもそのまま当てはめていた。衆議院掲載の第221回国会衆法28号では、期限内に所定の法律が成立しない場合の措置を、比例代表45削減としている。本稿は両案の原文、審査経過、各党の公表を照合し、削減する場所と適用の時期を分けて読む。
1. 同じ45削減でも、二つの案は違う
衆議院の第219回国会衆法11号は、期限内に法制上の措置が講じられない場合の仕組みとして、小選挙区289から264、比例176から156、総定数465から420へ改める内容を置いていた。25と20を足して45となる。これが旧稿で参照していた原文である。
一方、第221回国会衆法28号は、比例176から131へ45減らし、総定数を420とする条件付きの措置を置く。小選挙区289を264へ改める条項は、この措置にはない。両案を同じ数字の再登場として説明すると、何を減らすかという最も大きな違いが消えてしまう。
大分県選管の第51回総選挙案内と衆議院掲載の両法案を基に作成。提案の条件付き措置を比較しており、現在の定数が420になったという表ではない。
| 制度・案の区別 | 小選挙区 | 比例代表 | 合計 |
|---|---|---|---|
| 現行の定数 | 289 | 176 | 465 |
| 第219回案の条件付き措置 | 264 | 156 | 420 |
| 第221回案の条件付き措置 | 289(変更なし) | 131 | 420 |
2026年案は、協議会で選挙制度の維持、見直し、抜本改正を含めて検討する段階と、所定の法律が成立しない場合の措置を分けている。協議の結論が必ず比例45削減になる、と説明しても正確ではない。本文の検討規定と条件付きの改正規定を別々に読む必要がある。
2. 全体9.7%と、比例25.6%を分ける
45÷465×100は約9.7%である。総定数に対する削減率としては旧稿の計算は変わらない。しかし、2026年案の条件付き措置を比例だけで計算すると45÷176×100で約25.6%になる。全体では約1割でも、比例という選出経路では約4分の1という違いがある。二つの割合は分母が違い、矛盾しているわけではない。
参考として2025年案の条件付き措置を同じように計算すると、小選挙区は25÷289で約8.7%、比例は20÷176で約11.4%である。どちらも削るから政治的な影響が均等、という意味ではないが、2026年案と削減対象の配分が異なることは数値から確認できる。
議席の構成比も変わる。現行では比例176÷465が約37.8%、2026年案の条件付き措置では131÷420が約31.2%となる。約6.7ポイントの差は、丸める前の比率の差から計算した。削減率25.6%と構成比の差6.7ポイントは別の指標で、取り替えて使うことはできない。
これらは定数の算術であって、特定政党の当選者が何人減るかを予測する計算ではない。各比例ブロックの定数、得票、名簿などの条件が必要になる。小政党への影響を論じる際にも、総議席の割合だけから全政党に同じ減少率を当てはめない。
3. 1年後に、すぐ選挙の定数が変わるわけではない
第221回案第2条第3項は、検討の結論に基づく法制上の措置を、この法律の施行から1年以内に講ずることを定める。附則は、その措置として制定することが明記された法律が成立しないまま公布から1年を経過した場合について、別の仕組みを置いている。単に与野党が口頭で合意したかどうかだけを条件としているわけではない。
さらに、総定数と比例定数を改める第3条の施行は、比例ブロックごとの定数を定める別の改定法の施行日に結び付けられている。新しい規定は、その改定法施行日以後に初めて期日が公示される総選挙から適用する。公布から1年という期限、改正規定の施行、選挙への適用は別の節目である。
したがって、「1年たてばその日に現在の議員45人が減る」という理解は誤りである。法案の文章を将来の具体的な選挙日に直結させることもできない。旧稿の、区割りの結論を得るだけの努力規定という説明も改めた。原文には期限内の法制上の措置と、その法律が成立しなかった場合の条件が具体的に書かれている。
別の法律が必要だから条件付き措置が無意味だ、とまでも言えない。期限を過ぎた場合の方向を法案が示していることと、その実施に追加の法整備が要ることは両立する。この二段階を省くと、政治的な圧力の仕組みと実際の選挙ルールの変更を混同してしまう。
4. 提出、付託、採決は別の記録である
第221回案の衆議院審査経過は6月24日の提出、26日の委員会付託、29日の趣旨説明、30日と7月1日の質疑、7月24日の閉会中審査に関する件を記載する。10月5日の第222回国会の政治改革特別委員会会議録にも、同じ第221回衆法28号が付託された記録がある。国会の回次が変わっても、議案番号を付した元の提出回次まで新しくなるわけではない。
ただし、10月5日のその会議で扱った案件は委員長・理事の互選であり、この記録だけで法案の実質審議や採決が同日に行われたとは言えない。旧稿の「三度目」を同一内容の法案が繰り返し提出された回数のように使う説明は削除した。政治的な焦点となった回数と、個別議案の手続きの回数は別である。
本稿では確認した付託と審査経過までを記載し、その後の全会議や将来の採決結果を網羅したとはしていない。成立を確認するには、委員会の採決だけでなく両院の議決や公布などの記録を追う必要がある。資料に空欄があることから、非公開の交渉の有無まで推測しない。
5. 各党の説明と、編集部の判断を分ける
自民党の6月11日の発表は、合同会議で法案を了承し、比例のみの削減を盛り込んだと説明する。その理由として、小選挙区削減による地方の議席減少や都市部の細分化を挙げ、民意の集約を重視する立場を示した。これは党が公表した理由であり、改革によって必ずその効果が生じるという編集部の認定ではない。
公明党の6月5日の公表では、西田幹事長が定数の議論そのものには反対せず、選挙制度と一緒に議論すべきで、比例のみ45削減には反対する立場を述べている。削減に反対か賛成かという一軸だけでは、条件や方法への異論が見えなくなる。いずれも当時の発表として扱い、全会派の現在の立場を代表させない。
首相が責任を曖昧にするため議員立法にした、批判をかわす知恵である、といった旧稿の意図の断定は根拠がそろわず削除した。また、消費税法案と同じ会期にあることだけから、両改革が一つの政治戦略で動くと決め付けない。手続き上の形式と政治家の動機を一緒にしないことが重要である。
独自の視点――減らす数より、代表する経路の比率を見る
編集部は、この比較の核心を、同じ45削減でも代表の選び方の配分が変わることに置く。根拠は、二つの法案の条件付き措置の違いと、全体9.7%に対して比例25.6%という分母別の計算である。単に議員が多いか少ないかを問うだけでは、候補者を選ぶ経路と政党を選ぶ経路のどちらをどれだけ縮めるかが抜け落ちる。
これは比例を増やせば必ずよい、あるいは少数の議員なら必ず効率的という結論ではない。制度の評価では、地域の代表、意見の多様さ、意思決定のしやすさのどこを重視するかを明示する必要がある。何を改善し、どの機能が弱まる可能性を受け入れるのかが語られて初めて、削減の数字に意味が付く。
もう一つは、協議がまとまらない場合の案にも同じ説明責任があることだ。期限は結論を促せるが、期限があること自体は採用する制度の妥当性を証明しない。人数の表だけでなく、選出経路の比率と適用までの条件を一緒に示す。制度の看板ではなく、代表の届き方を確かめることが本稿の独自の視点である。
訂正(2026年10月10日):旧稿は第219回案の小選挙区25・比例20削減を、2026年案にも適用して説明していた。第221回衆法28号の条件付き措置は比例45削減である。両案を区別し、1年経過の条件と別の改定法の施行・選挙への適用を補った。旧注記の報道依拠から法案原文の確認へ更新し、同一法案の再提出を示唆する「三度目」や、首相・与党の意図の断定を削除した。個別の当選予測、全会派の現在の立場、全後続審査と将来の成立は未確認である。
[文・構成=編集長 麻生 矩暉]
出典とメモ
- 第219回衆法11号・本文。小選挙区25・比例20の条件付き措置を確認。2026年案の説明へ混用しない。
- 第221回衆法28号・本文と概要。第2条、第3条、附則の条件・施行・適用を確認。比較表と割合は両案を基に作成。現行465・289・176は大分県選管の第51回総選挙案内も参照した。割合は公表定数の算術で、各党の当選予測ではない。
- 第221回の審査経過と第222回・10月5日の委員会会議録。提出・審査と付託の記録を確認。付託を同日の実質審議や採決とはしていない。
- 自民党6月11日発表と公明党6月5日発表。各党が公表した当時の説明として確認。政策効果や全会派の現在の意見、議員の内心を認定していない。










