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中国の住宅販売改革を読む 完成前販売は一律禁止ではない

住宅模型と無地の書類ファイル、建設中の建物を描いたAI生成イラスト。特定物件や制度による安全保証を示す図ではない

完成するまで待てば、買う家の姿を確かめられる。しかし中国の住宅販売改革は、完成前に売る仕組みを全国で一律に禁止したわけではない。2026年8月28日の3部門通知は、予約販売の条件と資金管理を強めながら、完成後の現物販売を優先するものだ。旧稿の「やめにいく」という見出しを改め、全国通知と後日公表された上海の実施例、販売比率の数字を分けて読む。

1. 二つの販売方式を、並行して整える

予約販売は建設中の住宅を売り、代金を先に受け取る方式である。現物販売は引渡し段階の住宅を売る方式だ。中国の住宅・都市農村建設部、自然資源部、金融監督管理総局による建房规〔2026〕3号は、予約販売の管理改善、現物販売の推進、土地・金融などの政策協調を組み合わせた通知で、8月28日から施行された。

新しい予約販売条件の中心は、一つの建物の主体構造が屋根部分まで完成していることだ。これは内装や水道、電気などが全て整い、すぐ入居できるという意味ではない。現物販売の優先と、予約販売を認める条件の強化を同時に書いている点を落とすと、全国で完成前販売が消えたという誤読になる。

全国通知の本文は、商務部の法規サイトに掲載された住宅・都市農村建設部サイト由来の転載で確認した。発行元の直接掲載ページと全地方の細則を網羅したものではない。ジェトロの9月3日説明とも主要な適用区分を照合したが、個別案件の契約や許可にどの規則が適用されるかを判定した記事ではない。

2. 支払いの前後だけでなく、資金の置き場所が変わる

全国通知は、予約販売の頭金や住宅ローンなどの購入資金を監管口座へ全額入れるとする。完成検査を終え、水道、電気、ガス、暖房などが引渡し可能な条件を満たした後に管理を解除する。代金を受け取ったことと、開発会社が制約なく使えることを区別する仕組みである。

引渡しが契約どおりにできない場合、買い手は契約の定めに従って解除を求められ、開発会社は返金と違約責任を負う。ただし、解除や返金を求める権利が書かれていることと、全ての案件で返金が実現したことは別だ。本稿は資金残高や執行結果を調べておらず、「購入者の損失がなくなる」とは書かない。

現物販売の案件でも、施工許可を得た後に少額の定金を受け取れる。価格、定金額、引渡し時期、履行できないときの責任を契約に定め、定金にも管理口座を設ける。従って「完成前の支払いが完全になくなる」という説明は正確ではない。日本の手付金の法的効果と同一視せず、ここでは中国通知の用語として定金を用いる。

実物を見て買えることは未完成の住宅を待つ不確実性を減らすが、品質や権利、契約の問題まで自動的に消すわけではない。全国通知が現物販売に完成検査、引渡し条件の証明、販売計画の届出、抵当や差押えなどの制限がないことを求めるのも、その区別を読む手掛かりになる。

3. いつの土地と、どの許可なのかで扱いが違う

建房规〔2026〕3号の予約販売・現物販売の適用区分を基に作成。全国通知の整理であり、地方の追加条件や個別案件の適用判定ではない。

全国通知の区分現物販売の扱い読み違えない点
施行後に新しく譲渡される土地優先する一律強制への読み替えはしない
譲渡済みだが建設工程計画許可なし優先する土地取得だけで旧扱いとは決まらない
建設工程計画許可を取得済み実施を奨励する施行前取得案件の予約販売条件等は旧規定

建設工程計画許可は、定金の項目に出てくる施工許可と同じ名前の許可ではない。土地、計画、施工、販売のどの段階の証明を持っているかを分ける必要がある。旧稿の「いま建設中かどうか」という説明だけでは、通知が置いた境界を十分に伝えられない。

施行前に建設工程計画許可を得た案件が予約販売を行う場合、条件や資金管理などは従来の規定に従う。その場合も資金管理を厳格にし、安全を確保するとされる。旧規定の適用を、監督がなくなる例外と受け取ってはいけない。

4. 完成までの資金は、自己資金だけではない

旧稿は現物販売になると開発会社が完成までの資金を自力で用意するとしたが、全て自己資金で賄うという意味に読めるため改める。全国通知は主担当の銀行を一案件につき一行決め、その銀行単独、または銀行団を率いる形で開発融資を提供するとしている。複数行の参加を禁じた規則ではない。

株式や債券による資金調達も支援し、現物販売と予約販売の双方について、合理的な融資需要を市場原則に沿って満たすことを掲げる。土地購入には自己資金を求める項目があるが、それを建設工程全体の借入禁止へ広げない。土地代の条件と開発融資の条件は別に読む。

完成前の回収を抑える場合、建設期間を支える資金の組合せが重要になる、というのは編集部の分析である。だが今回、各社の借入れや資金繰り、着工への実際の影響は調べていない。投資が必ず減る、弱い業者が必ず退出する、金利を下げても買い手は戻らないという旧稿の断定は、この通知だけでは支えられない。

5. 13.9%と32.4%は、何を証明するのか

漢中市住房和城乡建设局が9月2日に転載した中国建設報の専門家解説は、全国の新築商品住宅の現物販売比率が2022年13.9%、2025年32.4%と記す。差は32.4-13.9=18.5ポイント、比率同士の倍率は32.4÷13.9=約2.33である。この計算は本文に掲載された二つの値から再現できる。

ただし、元の統計表や集計方法、比率の分母が面積・戸数・金額のどれなのかは今回独立に確認できていない。専門家解説に載った比率として扱い、「住宅の全在庫の3分の1が新制度へ切り替わった」とはしない。比率が約2.3倍でも、現物販売の絶対量が同じ倍率で増えたとは限らない。

同じ解説に出てくる中古住宅の販売面積比率は、新築の現物販売比率とは分類が違う。両方を足して完成品販売の割合を作ることはできない。また2025年の比率は2026年8月の通知より前であり、この通知が過去の上昇を生んだとも言えない。買い手の回避や完成在庫の増加がどれだけ影響したかも、二つの比率だけからは分からない。

6. 上海の後日補足を、全国規則と混ぜない

上海市は9月28日、沪建房管联〔2026〕451号を公表し、同日から実施した。9月4日の初稿より後の情報として補足する。現物販売の定金は一般に総額の3%を超えないとするが、全国通知の「少額」に3%という数字はない。上海の条件を中国全土の一律上限と紹介しない。

上海の意見には、8月28日から予約販売許可を取得する案件の個人住宅ローンは、竣工届出後に実行するという規定もある。購入者のローン実行と、開発会社への開発融資を分けている。これも上海の実施内容として扱い、全国通知本文の条件と混同しない。

移行途中の案件については、土地取得や公告、計画許可の時点で区分し、一部に2027年末まで従来の予約販売条件を使える取扱いを置く。追加の資金管理や届出などが伴うため、全案件を旧条件で売れるという意味ではない。一つの地方例だけでも、全国の優先方針と現場の移行措置を別々に確認する必要が見える。

独自の視点――先に売るかより、誰の資金をどこで守るか

編集部は、販売方式の名称だけで安全性を判定するより、購入者が払う時点、資金を管理する口座、銀行が融資する工程、引渡しと権利登録の接続を追うことが有用だと考える。全国通知の予約販売にも管理強化があり、現物販売にも完成前の定金がある。二者を安全と危険に完全に分けるだけでは、今回の設計の肝を取り逃がす。

政策の優先順位、実際の販売構成、買い手保護の実効性は三つの違う問いだ。優先と書かれたことは販売実績ではなく、比率の上昇は返金や引渡しの成功率ではない。改革を評価するなら、同じ定義での販売推移に加え、未引渡し、管理資金、返金や権利登録の実績を追う必要がある。これは検証の順番の提案であり、効果を実証した結果ではない。

訂正・補足(2026年10月11日):全国通知を完成前販売の一律廃止と読める見出しを改め、予約販売強化と現物販売優先を区別。完成前の定金、管理口座、自己資金だけではない開発融資を補足し、リスク消失・着工減・需要回復・業者退出を断定した説明を改めた。旧注意の比率と適用範囲は中国側公表に基づき地方細則の確認が必要という趣旨を保持。9月28日の上海実施意見を後日情報として追加した。13.9%・32.4%は転載された専門家解説の値で、原統計の分母・方法、全地方の運用、個別契約と改革効果は未検証である。

[文・構成=編集長 麻生 矩暉]

出典とメモ

  • 商務部法規サイト掲載・建房规〔2026〕3号(8月28日施行、住宅・都市農村建設部サイト由来の転載)。予約販売条件、監管口座、計画許可前後の扱い、定金、主担当銀行と銀行団、融資、登録を確認。比較表は通知を基に作成。発行元の直接掲載原本、別の融資通知の全条項、全地方細則・個別案件の適用は未確認。
  • 漢中市当局転載・中国建設報の虞晓芬専門家解説(9月2日)。13.9%と32.4%の記載を確認、差18.5ポイント、倍率約2.33を計算。原統計表、分母の単位、集計方法、絶対販売量と要因別の寄与は未確認。専門家の将来効果の見解を確定結果としない。
  • 上海市・沪建房管联〔2026〕451号(9月28日実施)。定金一般3%、竣工届出後の個人ローン、在途案件の移行条件を確認。地方例で全国一律条件ではない。
  • 旧参照のジェトロ9月3日解説と主要適用区分を照合。中国新聞網の通知報道、現物販売優先の報道、日経の予約販売報道は履歴として保持。全報道、歴史、国際比較、企業の資金繰り・買い手の行動、返金・引渡し実績、日本への波及を完全検証したものではない。2026年10月11日確認。独自の視点は編集部の分析と検証提案であり、取材体験や制度利用の助言ではない。