2026年10月3日改訂。本稿は中国の2026年8月の製造業PMIを扱います。国家統計局の公表ではPMIは49.8で、前月から0.6ポイント上昇しました。内訳の新規受注は50.6、従業員指数は48.7。この組合せから何が分かり、何までは言えないのかを、指数の計算方法に沿って確認します。
49.8は、経済が0.2%縮んだという意味ではない
PMIは企業の購買担当者への調査から作る指数で、50を上回るか下回るかで前月からの拡大・縮小の方向を読みます。49.8が前月より上がったことと、50を下回っていることは両立します。「指数の改善」と「拡大側に入ること」を区別する必要があります。
国家統計局の説明では、個別の分類指数は、増加などの肯定的な回答の割合に、横ばいの回答の割合の半分を加える方法です。製造業PMIは五つの分類指数を加重して作ります。したがって、49.8は生産量の増減率でも、企業の49.8%が好調という意味でもありません。
回答例で仕組みを確かめる
単純化した仮の例として、ある項目で「増加」40%、「横ばい」20%、「減少」40%なら、40+20÷2=50になります。「増加」45%、「横ばい」20%、「減少」35%なら55です。どの程度増減したかの大きさは、この計算には入りません。これは分類指数の仕組みの例で、実際の季節調整済みPMIを再現するものではありません。
このため、少数の大幅な生産減と多数の小幅な増加などが同時に起きる場合、指数だけから総生産量を求めることはできません。金額・数量を見る統計と、方向の広がりを見るPMIは、役割が違います。
8月の受注と雇用の違い
8月の生産指数は50.4、新規受注指数は50.6でした。一方、従業員指数は48.7で前月より0.3ポイント低下しています。受注・生産が拡大側にあるのに対し、雇用に関する回答は縮小側にある、という違いが確認できます。
ただし、雇用指数48.7から、雇用者数が1.3%減ったとは計算できません。賃金が増えていない、一人当たり人件費が一定、残業で増産している、といった結論も、この指数だけでは導けません。
雇用が追いつかない理由は仮説として検証する
考えられる仮説には、受注回復の持続を見極めている、既存の設備や人員で対応している、受注が伸びた業種と雇用が減った業種が異なる、といったものがあります。本稿では、8月の指数だけでいずれかを確認済みの原因とは扱いません。
検証には、企業の採用計画、労働時間、設備稼働率、業種別の生産・雇用の変化などが必要です。「ハイテクが伸びたから全体の雇用が増えない」という説明にも、業種構成と雇用への寄与を示す追加資料が要ります。
日本企業への影響を読む順序
PMIが上がれば日本の機械受注が増える、あるいは雇用が弱ければ日本への発注が止まる、と直結させることはできません。取引先の業種と、設備投資・部品購入・在庫積増しのどの需要に関わるかを分け、企業の受注実績や貿易統計で確かめる必要があります。
比較メモには、対象月、総合指数、生産、新規受注、従業員、実際の数量・金額の統計を別欄で記録します。総合指数だけの上下より、どの指標がどちらへ動いたかを残すと、翌月以降に仮説を確かめやすくなります。1か月の一致だけで回復の持続性を断定しないことも大切です。
出典・訂正
中国国家統計局:2026年8月中国購買担当者指数(表1・附注の計算方法)。仮の回答例と分析上の注意点は本稿で作成しました。
旧稿の「0.1~0.2ポイントは誤差に近い」とする根拠のない説明、雇用停滞の原因や残業・人件費・対日発注を断定した記述を訂正しました。閲覧できない配信リンクを一次資料に置き換えています。














