金融庁が公表した税制改正大綱の解説では、2027年1月以降、つみたて投資枠を0〜17歳に広げ、年間60万円、非課税保有限度額600万円とする仕組みが示されている。本稿はこの公表内容を基に、枠を積立額と年数に分けて考える。12歳以降の払い出しにも条件があり、投資の運用益が非課税になることと、親や祖父母から資金を渡す際の贈与税は別の問題である。
年60万円、満額まで何年かかるか
金融庁の説明にある年間投資枠は60万円であり、月換算では5万円となる。600万円÷60万円=10年というのは、毎年上限まで購入する場合の単純計算だ。年齢は暦年と誕生日の条件があるため、「0歳から始めれば必ず10歳で満額」という言い方は避ける。月2万円なら25年を要するが、0〜17歳の期間に25年間積み立てることはできない。18歳以降は成人の制度へ移るので、未成年向けの600万円枠をそのまま25年使うという意味ではない。
ジュニアNISAとは何が違うのか
ジュニアNISAは2023年で新規投資が終了した旧制度である。当時の年間枠は80万円、非課税期間は原則5年だったが、既存の商品は継続管理勘定で18歳まで非課税保有できる。2024年以降は年齢や理由にかかわらず全額の非課税払い出しが可能で、一部だけの払い出しはできず口座は廃止される。一方、金融庁の新制度の説明では、12歳以降に子のための資金を払い出す際、本人同意を示す書面と親権者等の申出書を求める。旧制度の当初の制限と、現在の既存口座の扱いを混同しない。
600万円を運用し続けるとどうなるか(編集部による概算)
ここからは金融庁の資料に直接の記載がない、編集部による試算である。仮に600万円を年率3%で運用し、引き出さずに18歳から10年間そのまま置いておいたとすると、単純な複利計算では約806万円まで増える。年率5%であれば約977万円である。もちろんこれは値上がりを保証するものではなく、投資である以上、元本を割り込む年もありうる。非課税のメリットが効いてくるのは運用益そのものが大きくなったときで、本来なら値上がり益にかかるはずだった約20%の税金がまるごと非課税になる点に、この制度の実質的な価値がある。
節税額を数字にすると(編集部による概算)
仮に600万円の元本が最終的に800万円になり、200万円の値上がり益が出たとする。通常の課税口座であれば、値上がり益には所得税と住民税を合わせて20.315%の税率がかかり、単純計算で約40万6000円が税金として差し引かれる。こどもNISAの非課税枠を使えば、この約40万6000円がそのまま手元に残る。600万円という上限だけを見ると縁遠い制度に思えるが、値上がり益の何割かを税金で失わずに済むという効果は、金額の大小にかかわらず同じ仕組みで働く。少額からでも、非課税という条件そのものにはこの節税効果が備わっている。
家族で使うと非課税枠はどこまで広がるか
こどもNISAは、成人が使う通常のNISAとは別枠で持てる制度である。成人1人あたりの非課税保有限度額は1800万円であり、夫婦2人であれば合計3600万円になる。ここに子ども2人分のこどもNISA、600万円かける2人で1200万円を加えると、4人家族全体の非課税保有限度額は単純合計で4800万円に達する計算になる。もちろん、この金額をすべて埋められる家庭は限られており、絵に描いた餅に近い数字であることは承知しておく必要がある。それでも、家族単位で見た非課税枠の広がりを知っておくことは、教育資金づくりの選択肢を考えるうえで意味を持つ。
誰が実際に使いこなせる制度か
月5万円を続ける必要はなく、上限は達成目標ではない。祖父母からの援助を使う場合でも、こどもNISAは教育資金の贈与を自動的に非課税にする制度ではない。国税庁は、通常必要な生活費や教育費の非課税扱いは必要な都度直接使うものに限り、預金や株式購入に回した資金は別扱いになると説明する。暦年課税では一年間に受けた贈与を合計して基礎控除110万円を差し引くため、NISAに入れた分だけ見ればよいわけでもない。個別の申告や税額は他の贈与や事情と合わせて税務署・税理士等へ確認する。
積立額の比較と検証方法
| 毎月の積立 | 年間額 | 600万円到達まで |
|---|---|---|
| 5万円 | 60万円 | 10年 |
| 3万円 | 36万円 | 約16年8か月 |
| 2万円 | 24万円 | 25年 |
金融庁の年間60万円・生涯600万円枠を基に編集部作成。
表の到達年数は600万円÷年間積立額の算数であり、投資できる年齢の条件を取り除いた比較である。運用益、売却による枠の扱い、手数料、価格変動は含めない。25年の行は未成年枠で実行できる計画ではない。制度の案内は資料の公表時点を確認し、実際の開始時期・申込条件・対象商品は最新の公式案内と利用先で確かめる。
枠と評価額を混同しないために
600万円は買い付けた金額の上限(簿価ベース)であり、運用後の評価額の上限ではない。たとえば毎月5万円を10年間積み立てても、価格変動で評価額は600万円より増える場合も減る場合もある。非課税の対象は制度上の運用益等で、損失が出たときに他口座の利益と通算できるという意味ではない。投資を始める時期や商品を一律に勧めるものではない。
家計の負担を考えるときは、月5万円という数字だけを単独で置かず、教育費・生活防衛資金・保険料などとの優先順位を確認したい。定額積立は購入時期を分散できる一方、元本割れの可能性をなくす仕組みではない。制度の枠を埋めること自体を目的にせず、必要になる時期と値動きに耐えられる範囲を決めることが前提となる。
独自の視点――非課税枠より先に使う時期を置く
例えば、子どもが10歳の時点で教育資金を考え、18歳になるまでの8年間を仮に用意できるとする。月2万円なら24万円×8年=192万円、月3万円なら288万円、月5万円なら480万円となる。いずれも600万円には届かないが、それは不足を意味しない。必要な時期、途中の生活費、値下がり時に使わずに済む資金を先に置くほうが、枠を埋めるために積立額を増やすより判断しやすい。
金融庁の年間60万円・保有限度額600万円の説明を基に作成した編集部の条件計算。8年は仮定
| 仮の積立額 | 8年間の購入額 | 600万円との差 |
|---|---|---|
| 月2万円 | 192万円 | 408万円 |
| 月3万円 | 288万円 | 312万円 |
| 月5万円 | 480万円 | 120万円 |
式は月額×12×8で、収益率は使っていない。子の生年月日や開始月によって実際に使える暦年数は変わるので、この8年を制度上の一律の年数とは扱わない。複利の例も、先に600万円が全額あり、その後10年間一定率で運用できると仮定したものだ。毎月積み立てながら10年を過ごす計算とは結果が違う。売却益がなければ、例示した節税額も発生しない。
訂正・補足(2026年10月9日):25年の計算を未成年枠の利用期間と読み違えないよう修正した。旧ジュニアNISAの2024年以降の全額払い出しも補足した。運用益の非課税と贈与税は別であり、教育資金の贈与が自動的に非課税になるという従来の説明を訂正した。
※本稿の複利試算・節税額の試算は編集部による概算であり、実際の運用成績や税額を保証するものではない。用いた年率・税率はあくまで説明のための一例である。
本稿は制度と計算の情報提供であり、特定の銘柄の売買や資金贈与を勧めるものではない。
[文・構成=編集長 麻生 矩暉]
出典とメモ
2026年10月9日、金融庁「アクセスFSA」2026年2月号の大綱解説7〜8ページ、金融庁・2023年までのNISA、国税庁の贈与税がかからない場合と暦年課税の計算を確認した。枠の説明は大綱解説の内容であり、本文で成立後の条文の全要件まで照合済みとはしていない。8年間の比較は編集部計算である。














