財務省が令和9年度(来年度)予算の概算要求に盛り込んだ国債費は、36兆6386億円だった。今年度の当初予算より5兆3628億円多い。内訳を割ると、増えた分の3分の2は借金の元本ではなく、利息である。利払いに充てる額は16兆5888億円で、1年で3兆5516億円膨らんだ。要求と要望を合わせた総額143兆656億円が4年連続で過去最大になった背景には、この利払いの重みがある。
国債費は何を払う費用なのか
概算要求とは、各省庁が翌年度予算の希望額を財務省に出す、予算編成の入口の書類である。今回の提出期限は8月末で、ここから年末にかけて査定が進み、政府の予算案が固まる。要求額はあくまで希望であり、そのまま通るわけではない。
国債費とは、過去に発行した国債の元本の返済と、利子の支払いをあわせた支出である。新しい政策の費用ではない。すでに借りたお金の後始末にかかる費用なので、各省庁の事業のように「やめる」「減らす」と決めにくい性格をもつ。
今回の要求・要望の総額は143兆656億円。内訳は、要求額が128兆967億円、要望額が2兆7959億円、「強く豊かな日本」投資枠が12兆1730億円である。国債費の36兆6386億円は、この総額の約4分の1にあたる。編集部の計算では25.6%だ。
36.6兆円を三つに割る
財務省が示した国債費の内訳は三つある。債務償還費が20兆25億円(前年度比1兆7939億円増)、利子及割引料が16兆5888億円(同3兆5516億円増)、国債事務取扱費が473億円(同173億円増)である。
債務償還費とは、国債の元本を返していくための費用である。利子及割引料とは、国債や借入金の利息にあたる費用である。名前は堅いが、前者が「元本」、後者が「利息」と覚えておけばよい。
増加額5兆3628億円を三つに分けると、利子が3兆5516億円、償還が1兆7939億円、事務が173億円になる。割合にすると、利子が66.2%、償還が33.5%、事務が0.3%である。いずれも編集部による計算だ。増えた分の主役は、利息である。
前年度当初予算は財務省の表に、利子及割引料13兆371億円、債務償還費18兆2086億円と掲載されている。これらは逆算値ではなく公表値である。利子及割引料の増加率は公表増額3兆5516億円÷13兆371億円=約27.2%、債務償還費は約9.9%となる。伸び率を比べた約2.8倍は、利息の支払額が元本の2.8倍という意味ではない。
利払いを「1日あたり」に直すと
大きな数字は実感がわきにくい。利払い16兆5888億円を365日で割ると、1日あたり約454億円になる。増えた3兆5516億円は、1日あたり約97億円である。いずれも編集部による概算だ。来年度は今年度より、毎日97億円ほど多く利息を払う計算になる。
比べる物差しも置いておく。一般歳出とは、国債費と地方交付税交付金等を除いた、政策に使う経費の中心部分である。今回の要求は85兆4295億円だ。利子の増加分3兆5516億円は、その4.2%に相当する。政策経費の4%強にあたる額が、増えた利息だけで消える形である。
一般歳出85兆4295億円、国債費36兆6386億円、地方交付税交付金等20兆9974億円を表示単位で足すと143兆655億円となり、総額143兆656億円と1億円ずれる。原資料は億円未満を四捨五入しているため、丸めた数の合計が一致しない場合がある。「完全に一致する」という従来の説明は訂正する。
なぜ利息は増えるのか、私たちはどう読むか
金利が上がる局面では、新規発行や借換えを通じて利払い費へ影響が及ぶ。日銀は9月18日に1.25%程度への政策金利変更を決め、24日から適用した。10月の記事で1.0%程度を現在の水準とした記述は訂正する。ただし国債費は市場の金利を見込んだ予算の積算で、政策金利の変化だけから増加額を全て説明できるわけではない。
民間でも同じ方向が見える。10月1日に発表された日銀短観では、企業の借入金利の判断が、大企業も中小企業も「上昇」を示した。国も企業も、金利が上がる世界で借りている。
中小企業への影響を試算した報道もある。ロイターによると、金利が0.50ポイント上がると、赤字企業の割合は27.7%から29.4%に、0.75ポイント上がると30.2%に高まる。利息の重みは、国の予算だけでなく、企業の損益にも広がっていく。
財源の側から見ても、条件は厳しくなる。高市首相は7月30日、食品の消費税率を2027年4月から2年間、1%にする方針を表明した。時事通信は財源を「赤字国債に頼らず」と報じている。毎日97億円ずつ増える利息を抱えたまま、新しい減税や歳出の財源を探す作業は、その分だけ細くなる。
年末の予算案までに、国債費がどう査定されるかが焦点になる。見るべきは総額より、利払いの積算にどの金利を使うかだ。ここが動けば、1日454億円という数字も動く。
想定金利3.8%は、29年ぶりの高さ
利払い費の計算には、積算金利と呼ばれる前提が置かれる。積算金利とは、翌年度に発行する国債の利率をあらかじめ見込んでおく数字で、市場の長期金利より少し高めに置くのが慣例である。見込みより金利が上がっても、払えなくなる事態を避けるためだ。
2026年度予算で3.0%だった積算金利は、2027年度の要求では3.8%程度に引き上げられた。報道によれば、1998年度以来29年ぶりの高さである。利払いに充てる額は1年で3兆5516億円増え、増加率は27.2%になる(編集部の計算)。長期金利の上昇に後から追いつくための数字であって、支出を増やしたいという意思の表れではない。
金利の請求書は、遅れて届く
国債は満期がばらばらで、10年債もあれば30年債もある。金利が上がっても、すでに発行した低い利率の国債はそのままだ。利払いが増えるのは、満期が来て借り換えるときと、新たに発行するときである。だから政府の利払い費は、市場の金利が動いてから数年かけて、少しずつ積み上がる。2027年度の要求に表れているのは、その積み上がりが本格化する局面に入ったという事実である。
国債費36兆6386億円を人口で割ると、国民1人あたり約30万円になる(編集部の概算)。国債費が増えれば、社会保障、公共事業、教育、防衛といった政策に使える支出は、同じ財布の中で相対的に圧迫される。不足を新しい国債で埋めれば、翌年以降の利払いがさらに増える。同じ構造がもう一周する。
公表表で確かめる内訳
財務省の内訳表では、2027年度の国債費要求は36兆6386億円、2026年度当初比5兆3628億円増である。利子及割引料の増額3兆5516億円を増額全体で割ると約66.2%になる。償還と利払いは別の項目であり、この表を使って比較すると金利に関わる負担の増え方を追える。なお、公表済みの丸めた利子の年額同士を引くと3兆5517億円となるが、公表増額は3兆5516億円である。各計数の四捨五入による差を保持し、表の増額を勝手に修正しない。
検証方法:財務省の国債費内訳表の2026年度当初予算と2027年度概算要求を比較した。全省庁の総額は9月4日の一般会計集計表でも照合した。要求同士の比較でも、補正後予算との比較でもない。概算要求は成立予算ではなく、金額が編成過程で変わりうる。
出典:財務省「財務省所管令和9年度概算要求をとりまとめました」を基に作成。
独自の視点――日割りと予算比較の条件をそろえる
読み方の補足:「1日当たり約454億円」は利子及割引料16兆5888億円、すなわち165888億円を365日で割った値である。国債費総額36兆6386億円を割った値ではない。2027年度は365日として年額を均しており、毎日同額を支払うわけでもない。支払日は国債ごとに異なる。
予算額の比較では、当初予算、補正後予算、概算要求を混ぜないことが重要である。本記事の基準は2026年度当初予算と2027年度概算要求で、両年度の概算要求同士という従来の記述は訂正する。
財務省の2027年度国債費概算要求内訳を基に作成。各値は億円未満四捨五入
| 国債費の項目・億円 | 2026年度当初 | 2027年度要求 | 公表増額 |
|---|---|---|---|
| 債務償還費 | 182,086 | 200,025 | 17,939 |
| 利子及割引料 | 130,371 | 165,888 | 35,516 |
| 事務取扱費 | 300 | 473 | 173 |
| 合計 | 312,758 | 366,386 | 53,628 |
訂正(2026年10月9日):日割り454億円の分子を利子及割引料へ訂正した。前年度の利子は逆算13兆372億円ではなく公表13兆371億円である。総額の1億円差と利子の増額の端数差は公表表の四捨五入を確認し、当初予算と翌年度要求の比較であることを明示した。積算金利3.8%や29年ぶりという記述は報道によるもので、今回照合した国債費内訳表からは確認できない。公表額の検証と報道の説明は区別する。
追加訂正(2026年10月9日):本文の政策金利の現在値を1.25%程度へ変更した。概算要求が取りまとめられた8月と、本文を読んでいる10月の政策金利を区別する。9月の決定が、先に公表された8月の要求額を直接増やしたという時系列の説明にはしない。
※本稿の数字は概算要求の段階のもので、年末の予算案で変わる。国債費の積算に使われた想定金利は、確認できた資料に記載がなかった。
更新(2026年10月6日):国債費と想定金利を扱った関連記事2本の内容をこの記事に統合しました。積算金利が29年ぶりの高さになったこと、利払い費が遅れて増える仕組みを加え、出典のあとにあった内訳の節を本文に移しました。
[文・構成=編集長 麻生 矩暉]
出典とメモ
2026年10月9日、財務省の国債費内訳表(2026年8月28日)と全省庁の一般会計集計表(9月4日)を直接照合した。比較表は内訳表を基に作成。四捨五入の注記を含めて確認した。
政策金利の確認資料:日本銀行の2026年9月18日の金融市場調節方針変更。国債費の8月公表資料と、金利変更の日付は区別して扱う。














