JB News

政治・経済・海外情勢の深層を読み解くニュースメディア

働く高齢者943万人 雇用者の10年増225万人、8割は非正規

仕事着や作業着の人々のシルエットと、棒グラフとカレンダーを重ねたAI生成イラスト

総務省統計局が2026年9月20日、高齢者の統計を公表した。65歳以上の就業者は2025年に943万人となり、2004年以降22年連続で増えた。一方、見出しの225万人は就業者全体の増加ではなく、2015年から2025年に増えた「役員を除く雇用者」の内訳から計算した値である。その約8割が非正規だった。943万人という総数と、雇われて働く人の変化を分けると、数字の意味が見えてくる。

943万人が置かれている場所

2026年9月15日現在、65歳以上の人口は3624万人で、前年より2万人増えた。総人口に占める割合は29.6%と過去最高になった。総務省は、この割合が比較した39か国のなかで世界最高だとしている。

人口の3624万人は2026年9月15日時点、就業の943万人は2025年平均であり、基準時点が異なる。2026年の人口が前年比2万人増だったことから、2025年の就業者増の理由を直ちに説明することはできない。同じ年の人口と就業率をそろえ、人数の変化を分けて見る必要がある。人口の増加だけで就業が増えたと断定しないためにも、この時点の違いを残しておきたい。

就業者とは、月末1週間に収入を伴う仕事を1時間以上した者、または月末1週間に仕事を休んでいた者である。この定義でいう65歳以上の就業者が943万人。65歳以上人口に占める割合、つまり就業率は26.0%で、前年より0.3ポイント上がった。

15歳以上の就業者総数に占める65歳以上の割合は13.8%。前年より0.1ポイント高く、過去最高である。943万人の内訳は、男性542万人、女性401万人だった。

10年で増えた225万人を、正規と非正規に割る

資料は、正規と非正規の職員・従業員について10年前との比較を載せている。正規の職員・従業員は47万人増、非正規の職員・従業員は178万人増である。

公表された増加数を足すと225万人となる。そのうち非正規は178÷225×100=約79.1%である(編集部の計算)。対象は役員を除く雇用者であり、自営業主や家族従業者などを含む就業者全体ではない。図4の就業者総数は2015年732万人、2025年943万人で、表示値の差は211万人。225万人を943万人全体の10年増として読むと、異なる集団を混ぜることになる。

2025年には、役員を除く65歳以上の雇用者が586万人いた。正規140万人、非正規446万人で、非正規の割合は76.1%である。パート・アルバイト309万人の52.7%も、分母は586万人である。非正規446万人を分母にして編集部が計算すると、309÷446×100=約69.3%となる。「446万人のうち52.7%」という従来の記述は分母が誤っていた。

いちばん急に増えたのは75歳以上だった

年齢階級別に見ると、増え方の差がはっきりする。非正規の職員・従業員は、65〜69歳が213万人で10年前に比べ32万人増、70〜74歳が142万人で76万人増、75歳以上が91万人で71万人増である。

公表された現在値から増加数を引くと、65〜69歳は181万人、70〜74歳は66万人、75歳以上は20万人となる。現在値を割ればおよそ1.2倍、2.2倍、4.6倍である。ただしこれは丸められた値を用いた逆算・概算である。図9には時系列接続用の実数を用い、割合は既公表値から計算したという注記もある。小さな母数の倍率を、精密な伸び率や個人の働き方の変化と読み替えてはならない。

就業率も同じ方向を向いている。65〜69歳は54.5%、70〜74歳は36.2%、75歳以上は12.6%。いずれも比較できる年以降で過去最高になった。

半分が高齢者という産業がある

産業別では、「卸売業,小売業」が131万人で最も多い。次いで「医療,福祉」が122万人、「サービス業(他に分類されないもの)」が108万人、「農業,林業」が88万人と続く。

人数ではなく、各産業の就業者に占める割合で見ると順番が入れ替わる。「農業,林業」は50.6%。この産業で働く人の半分が65歳以上である。以下、「不動産業,物品賃貸業」が29.0%、「サービス業(他に分類されないもの)」が22.4%、「生活関連サービス業,娯楽業」が18.7%と続く。

割合が高いことは、その産業が高齢者の働き口として大きいことを意味するだけではない。65歳未満の担い手がそれだけ少ないという裏返しでもある。割合は分子と分母の両方で動く。人数が多い産業と、高齢者への依存度が高い産業は、別だということになる。

943万人は、二通りに読める

この数字は、高齢者が働き続けられるようになった結果とも読めるし、働き続けなければならなくなった結果とも読める。資料はどちらとも言わない。統計は人数と割合を並べるだけで、理由を書かない。

役員を除く雇用者の増加では、非正規178万人が正規47万人を上回った。一方、年齢階級別の非正規の増加数を足すと32+76+71=179万人となり、全体の178万人と1万人違う。公表値には丸め・接続の注記があるため、数字を無理に書き換えて一致させず、それぞれの集計範囲と精度を示す。こうした内訳は943万人という総数だけでは見えない。

独自の視点――同じ人数でも分母と集団の変化を分ける

総務省統計局・統計トピックスNo.149図8・図9を基に作成

知りたい割合分子と分母結果
雇用者のうち非正規446万人÷586万人76.1%
雇用者のうちパート・アルバイト309万人÷586万人52.7%
非正規のうちパート・アルバイト309万人÷446万人約69.3%(編集部計算)
雇用者の10年増のうち非正規178万人÷(47+178)万人約79.1%(編集部計算)

76.1%と52.7%は同じ586万人に対する割合で、52.7%は76.1%の内側に含まれる。この二つを足して100%を超えたと考えるのも誤りである。対して69.3%は非正規だけを取り出した構成比である。ニュースで割合を見るときは、分子の名称だけでなく「何人のうち」を一行書けば、同じ人数を別の意味へ置き換える誤読を防げる。

また、10年で非正規が増えたという集計は、同じ人が正規から非正規へ移った人数を示していない。新たに働き始めた人、年齢区分へ入った人、仕事を辞めた人などの出入りが含まれる。編集部の比較は集団の構成変化を読むためのものであり、個人の雇用歴や生活事情を推定するものではない。

増えた人数の約8割が非正規という見出しは、非正規の割合が10年で8割へ急上昇したという意味ではない。図9の公表割合は2015年74.2%、2025年76.1%である。差は76.1-74.2=1.9ポイントとなる。もともと非正規が大きな割合を占める集団に、正規も非正規も増えた結果である。増加分の構成比79.1%と、各年の全体に対する構成比は、別の問いに答える数字だ。

途中の動きも一方向ではない。図9では2019年の非正規割合が77.3%で、2025年の76.1%はそこから1.2ポイント低い。2015年と比べれば高いが、この10年間で最も高い割合ではない。人数の最多と構成比の最高を同じものとして扱うと、実際には増減した線を単調な上昇に描き替えてしまう。割合の比較には図の公表値を使い、時系列接続用の人数から逆算した比率で置き換えない。

編集部の見方は、人数の伸びと雇用の質を別々に問うべきだ、ということである。仕事を得る人が増えたことは人数で確認できるが、賃金、労働時間、本人が希望する働き方との一致まではこの図に載っていない。年齢構成の違いもあるため、構成比の上昇だけで全員の待遇が悪化したとも、就業者の増加だけで全員の暮らしが改善したとも判断できない。制度や職場を評価する際は、まず統計が示す範囲を区切り、その先に必要な問いを残すほうが、943万人という数字を人の生活へ短絡させずに読める。

訂正・補足(2026年10月9日):パート・アルバイト309万人の52.7%は、非正規446万人ではなく役員を除く雇用者586万人が分母である。225万人も同じ雇用者集団の10年増で、就業者全体の増加ではないため見出しを明確化した。図9の実数は時系列接続用数値で、割合は既公表値から算出される。逆算・倍率は公表された丸め値からの概算であり、内訳と総数が一致しない場合がある。

[文・構成=編集長 麻生 矩暉]

出典とメモ

主要数値は総務省統計局・統計トピックスNo.149「高齢者の就業」図4・6・8・9・10と脚注を照合した。図8の52.7%の分母と、図9の接続数値の注記は表・図の表示でも確認した。表は同資料を基に作成。69.3%、79.1%、211万人、年齢別倍率は公表実数からの編集部計算である。統計には就業動機や個人の雇用形態の移行人数の説明はなく、生活苦・自発性・待遇は推定していない。

追加照合(2026年10月11日):統計トピックスNo.149「高齢者の就業」8ページの図9と脚注を基に、2015年74.2%、2019年77.3%、2025年76.1%を比較した。+1.9ポイント、-1.2ポイントは図の公表割合を使った編集部計算である。人数の逆算比率ではない。雇用の質に関する最後の段落は、資料が直接示していない事項と、編集部が追加の検証に必要と考える問いを分けた分析である。