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コアCPI1.7%でも価格は上昇 電気・ガス支援と前年比の読み方

住宅内の壁に設置された電気・ガスのメーターと配管のAI生成イラスト

8月の全国消費者物価指数は、生鮮食品を除く総合、いわゆるコアCPIが前年同月比1.7%だった。7月の1.8%から上昇率が0.1ポイント縮み、1月から8カ月連続で2%未満となった。しかし、上昇率が縮むことは価格が前年より下がることではない。電気・ガスの支援は重要な要因だが、それだけが全体を動かしたわけでもない。統計局の月報と支援の公表資料を照合し、価格水準、伸び率、政策による押し下げを分けて読む。

1. 1.7%は、値下がりではなく前年からの上昇である

総務省統計局「2025年基準消費者物価指数・全国2026年8月分」表1・2を基に作成。指数は2025年=100。前年比と前月比は比較対象が異なり、前月比欄のみ季節調整値を用いる。

指数の対象8月の指数・前年比前月比(季節調整値)
総合102.2・1.9%0.0%
生鮮食品を除く総合102.0・1.7%0.1%
生鮮食品・エネルギーを除く総合102.5・1.9%0.3%

前年比1.7%は今年8月が前年8月より高いことを示す。7月から伸び率が縮んでも、価格そのものが下がったとはいえない。季節調整済み前月比は0.1%の上昇であり、比較する相手を区別する必要がある。

生鮮食品とエネルギーを除く指数の前年比は7月・8月とも1.9%だった。一方、8月の前月比は季節調整値で0.3%上昇している。旧稿の動いていないという説明は、前年比の数値が横ばいであることに限って使うべきだった。価格水準が停止したという意味にはしない。

表1で1月から確認すると、前年比は1.9、1.5、1.7、1.4、1.4、1.6、1.8、1.7%で、8カ月とも2%未満である。ただし、以前の価格で買えるようになったという意味ではない。

2. 電気・ガスだけが押し下げたわけではない

月報3ページはエネルギーの前年比を、7月0.6%から8月マイナス0.7%と示す。電気代やガソリンの下落幅拡大が押し下げに働いた。一方、生鮮食品を除く食料、宿泊料、携帯電話通信料も、総合の上昇幅を縮める側にある。診療代や携帯電話機などには押し上げる動きがあった。

同じ紙面の寄与度は、総合指数の前年比に対するものである。コアCPIの変化0.1ポイントへ、その数値をそのまま足して一致させるものではない。品目を除けば集計の範囲と重みが変わるためだ。掲載された主な項目だけを足す場合にも、未掲載の項目や丸めを無視して全体を再現したといわない。

旧稿のエネルギーだけが全体を下に引いているという断定は改める。補助で下がる料金と他の価格変化を両方調べ、一政策を全ての変化の理由にしない。

3. 二つの指数の差0.2ポイントは、補助の効果ではない

1.9-1.7=0.2ポイントという計算は、二つの前年比の差としては正しい。しかし、補助金がなければコアCPIが1.9%だったという計算ではない。エネルギーを除く指数は、その価格の政策分だけを戻したものではなく、エネルギーという対象全体を外している。

統計局のQ&Aでは各品目の価格を家計支出に基づく重みで集計する。新コアコアという呼称だけでは定義が混ざるため、本稿では生鮮食品及びエネルギーを除く総合と対象を明記する。

政策の寄与には別の試算がある。月報3ページの注記では、電気代はマイナス0.17、都市ガス代はマイナス0.03ポイントの寄与度とされる。表示値を足すとマイナス0.20ポイントになるが、これは総合に対する政策効果の試算値の合計である。先ほどの指数間の差0.2とは、数値が同じでも意味が違う。

試算の注記には当月分と前年の政策効果が剥落する分が併記されている。現在の補助だけでなく、比較する前年にどんな支援があったかも前年比へ影響するということだ。なお電気代の表示内訳マイナス0.39とプラス0.23の単純な和はマイナス0.16になる。合計欄はマイナス0.17であり、丸めた内訳から合計を作り直して公式値を修正しない。

4. 支援は使用月と検針月を分けて確認する

経済産業省2026年6月12日発表を基に作成。高圧の電気は別単価であり、表は低圧と都市ガスのみ。検針条件等による適用のずれは各契約と事業者の案内で確認する。

使用分(標準の検針月)電気・低圧の値引き都市ガスの値引き
7月使用分(8月検針)3.5円/kWh14.0円/㎥
8月使用分(9月検針)4.5円/kWh18.0円/㎥
9月使用分(10月検針)3.5円/kWh14.0円/㎥

旧稿の支援の具体的な終了時期は確定していないという注意は改める。この夏の措置は7~9月使用分という対象期間が公表され、通常の検針月は8~10月と示されている。9月使用分までという説明を、そのまま9月請求で値引きが終わると読み替えない。今後の別の措置や延長がないと、この発表だけで断定することもしない。

支援は対象の事業者を通じて料金を値引きする方式である。ただし、都市ガスとLPガスは同じ対象ではなく、事業者向け案内ではLPガスは対象外とされる。旧稿の電気と都市ガスはどの家庭も必ず買うという表現も外した。制度の対象と、各世帯が使う燃料をそろえなければ、支援の届き方を誤る。

例えば電気の低圧300kWh、都市ガス20㎥を使うという設定なら、7月使用分の値引きは300×3.5+20×14=1330円、8月使用分なら300×4.5+20×18=1710円となる。これは同じ使用量に支援単価を掛けた説明例で、標準家庭の実績や請求総額ではない。料金本体や使用量も変わるため、値引きが増えた分だけ必ず請求額が下がるとはいえない。

5. 支援が終わっても、前年比は同じ幅で跳ね返らない

前年にも支援があれば、今年の支援だけを見て前年比を説明することはできない。事業者向け公式案内には2025年7~9月使用分の支援も記される。旧稿の去年8月は支援なしという仮定を、今回の実態を示す例として使うのは不適切である。比較する両年の対象月と単価を確認する必要がある。

率の対称性にも注意したい。説明用に補助前の価格100が値引きで90となり、その後100へ戻ると仮定すると、下落率は10%だが、90から100への上昇率は100÷90-1=約11.1%となる。同じ10の金額差でも分母が違う。これは架空の一品目の計算で、実際の全国CPIの予測ではない。

ニッセイ基礎研究所の9月18日レポートは、10月2%台、年度末にかけて3%台を予想する。一機関の見通しで、民間の見方がおおむね一致しているという旧稿の一般化は改める。補助額を足すだけで将来の物価が確定する話でもない。

6. 日銀の判断と、家計の実感は別の問いである

日銀はCPI公表と同じ9月18日に、無担保コールレートを1.25%程度へ誘導する方針を賛成7・反対2で決め、適用は9月24日からとした。決定文は企業の価格転嫁や基調的な物価、今後の上振れリスク等を判断材料として挙げる。この月の1.7%だけで決定が矛盾しているとも、必然だったとも判定しない。

エネルギーを除く指数1.9%と日銀の基調的な物価判断も同一視しない。除外型指数一つで将来の持続性や賃金との関係まで確定するわけではなく、本稿は各委員がどの数字にどの重みを付けたかを測定していない。

家計についても、全国平均の価格変化と個人の支出額は一致しない。支出額は単価に加え購入数量や品目の選び方で変わる。支援を受ける燃料を使うか、食料を多く買うかによっても感じ方は違う。統計が正しいか体感が正しいかという二択ではなく、何を測った数字かを確認することが必要になる。

独自の視点――物価を読むときは三つの帳面を分ける

編集部は、物価の数字を価格の帳面、政策の帳面、家計の帳面に分けて読むことを提案する。価格の帳面では比較月と前年比・前月比をそろえ、政策の帳面では使用月、検針月、前年の措置を確かめる。家計の帳面では支援対象と自分の使用量を確かめる。三つを混ぜると、上昇率の鈍化が値下がりや生活の改善へ、逆に補助終了が一定幅の値上がりへすり替わる。

今回の計算例では、同じ使用量でも支援単価で値引きが変わり、同じ価格差でも比較の分母で率が変わった。そのため政策を評価する問いは、指数を何ポイント下げたかだけでは足りない。どの負担を誰に、いつ軽くし、その後の価格変化をどう見分けるかまで確かめたい。これは資料比較から導く編集部の検証方法であり、家計ごとの効果を取材や実測で確認したという主張ではない。

訂正・補足(2026年10月10日):エネルギーだけが上昇率を押し下げたとの断定を改め、他の要因を公式表で補足した。前年比横ばいを価格不変とせず、指数間の差0.2ポイントと政策寄与を区別。支援終了時期未確定との旧注意を、7~9月使用分・通常8~10月検針分の公表内容へ更新した。前年にも夏の支援があり、どの家庭も都市ガスを使うわけではないと補足。民間予想を一機関の見通しとして明記した。従来の8月数値は統計・民間集計に基づくという注意を引き継ぎ、本文の実測値は公式表で照合した。

[文・構成=編集長 麻生 矩暉]

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