2025年末の警備員は59万6985人で、60歳以上が約47.3%を占める。警察庁は9月16日、警備業への外国人材の受入れに関する検討会を初めて開いた。年齢構成は制度を考える材料だが、約半数がまもなく辞めるという予測でも、外国人材の受入れが決まったという知らせでもない。公式統計と会合原文を照合すると、働く人の人数、業者の規模、制度の条件を分けて読むことが重要になる。
1. 47.3%は年齢の分布で、退職の予定ではない
警察庁「令和7年における警備業の概況」本文2ページの原表を基に作成。60歳以上の合計・割合のみ編集部計算。他の割合は公表値。年末の人数で、勤務時間や退職予定を示さない。
| 年齢区分 | 人数 | 総数に占める割合 |
|---|---|---|
| 30歳未満 | 65,028人 | 10.9% |
| 60~64歳 | 75,001人 | 12.6% |
| 65~69歳 | 78,496人 | 13.1% |
| 70歳以上 | 129,012人 | 21.6% |
| 60歳以上の計 | 282,509人 | 約47.3% |
合計は75,001+78,496+129,012=282,509人、割合は282,509÷596,985×100=約47.323%で、小数第1位に丸めて47.3%となる。70歳以上と30歳未満の比も、129,012÷65,028=約1.98倍と確かめられる。
ただし、年齢の比率をそのまま欠員の比率にしてはいけない。60歳以上の全員が同じ時期に退職するわけではなく、勤務時間や配置される業務もこの表からは分からない。年齢は将来の人員計画を考える入口であり、個人の技能や安全性を判定する点数ではない。
同じ人数でも短時間勤務と長時間勤務では供給できる時間が異なる。どの地域、どの時間帯で不足しているかを知るには、全国の年齢分布に勤務条件や業務の需要を重ねる必要がある。高齢化という言葉だけで、既に働く人の貢献を小さく扱わないことも大切である。
2. 年末の純増9137人は採用人数ではない
前年末の587,848人と2025年末の596,985人の差は9137人である。これは二時点の総数の差で、年間の新規採用人数や離職者数を直接示していない。純増が小さいという理由だけで、採用がほとんどなかったと判断することはできない。
説明用に、1万人が加わり5000人が離れた場合も、3万人が加わり2万5000人が離れた場合も、差し引きは5000人になる。同じ差でも、採用と定着の状況は違う。この設定例は統計の実績を推計したものではない。
60歳以上の人数を9137で割って、補充まで何十年かかると求める計算も適切ではない。分子はある時点の年齢別人数、分母は異なる年末の差であり、退職速度や採用能力をそろえた数字ではない。以前削除した補充年数の計算を復活させず、退職見込み、採用数、定着、勤務時間をそれぞれ確認する。
3. 平均54.5人と中央の業者の規模は違う
認定業者は10,949業者で、596,985÷10,949=約54.5人となる。しかし原表では100人未満が9885業者、全体の90.3%である。これは業者数の比率で、警備員の90.3%が小規模業者で働くという比率ではない。会社の数とそこで働く人数の分母を分ける必要がある。
規模順に業者を並べた場合の中央も計算できる。10,949業者の中央は(10,949+1)÷2=5475番目である。5人以下が2912業者、6~9人が1173業者で、9人以下の累計は4085業者。10~19人の2131業者を加えると6216業者となるため、5475番目は10~19人の区分に入る。
この結果は中央値の区分であって、正確な中央値が何人かまでは公表表から求められない。平均54.5人を典型的な業者の人数と扱うより、分布を一緒に見るほうが実態に近づける。なお、規模が小さいことだけで教育能力が不足していると確定するわけでもない。共同研修、担当者、実際の勤務体制の確認が別に必要になる。
4. 検討の開始と受入れの開始を分ける
検討会で問われているのは、警備業を特定技能制度と育成就労制度の対象とすることをどう考えるか、対象にするならどのように受け入れるかである。会合が開かれたという事実だけで、対象業務や人数、開始日が確定したとはしない。
9月10日の会見で2027年年初の取りまとめを求めたのは警察庁長官である。旧稿は国家公安委員会委員長の発言としたが、同じ会見録に別の回答者が登場するため、質問と回答の対応を原文で修正した。取りまとめの目安も、外国人が就労を始める日とは違う。
長官は人手不足の背景を説明する際、警備員を含む保安職業従事者の求人倍率と全職業平均を比較した。保安職業全体の指標を警備員だけの指標へ置き換えたり、全国の人数表から不足人数を逆算したりはしない。人数が増えることと、求人を満たせないことは両立し得るが、どこでどれほど不足するかを別に測る必要がある。
第1回議事要旨には、既に国内の警備業務に従事する外国人の実態を把握すべきという意見もある。今回の二制度の対象化の検討を、外国人が警備に関わる最初の機会と一括して説明しない。制度の名称、対象業務、現在の就労の仕組みを区別することが、議論の前提になる。
5. 安全を本人の試験だけに任せない
議事要旨は、受入れの妥当性、業務範囲、日本語・技能、上乗せ基準、教育や管理などの論点を示している。これらは主な意見の記録で、全員の合意や決定済みの要件一覧とは限らない。条件の案と、最終的な基準を混同しない。
例えば日本語の水準を議論するとき、試験の点数だけで無線の指示や緊急時の対応が保証されるとはいえない。議事要旨には業務特有の言葉と実務教育を考える意見がある。現場で誰が指示を確認し、誰へ支援を求められるかも、制度を動かす側の課題となる。
一方、受入れ条件を増やせば常に安全が高まるとも限らない。条件を実施する担当者や時間が足りなければ、書面上の要件と現場の運用が離れる。国籍で能力を決めつけず、必要な技能と、それを支える教育・監督の仕組みを具体的に確認したい。この評価は編集部の論点整理で、特定の業者を調査して安全性を判定したものではない。
6. 必要なのは頭数だけでなく配置できる時間である
人員計画では、必要な配置時間、配置可能な勤務時間、休暇や研修、時間帯の偏りを分けたい。説明用に一日160時間分の配置が必要で、一人が配置に使える時間を8時間と仮定すると、160÷8=20人相当となる。配置できる時間が6時間なら160÷6=約26.7人相当である。これは休憩や研修等を反映した時間の違いを示す架空の例で、法定の配置基準や標準的な勤務時間ではない。
さらに、合計時間が一致しても、必要な場所と時間帯に人を配れるとは限らない。資格が必要な業務、交代、欠勤への備えも別に確認する。単純な割り算をそのまま現場へ適用せず、条件を明示して計算の限界を示すことが必要である。
独自の視点――制度の人数より、教える余力を問う
編集部は制度を評価する際、何人受け入れるかに加え、どの業務へ、どれだけ教育・監督の時間を確保して配置するかを問いたい。平均54.5人に対し中央の業者は10~19人の区分という計算は、全ての業者に同じ自前の研修体制を想定してよいかを検討する材料となる。ただし、小規模だから安全性が低いという結論ではない。
人数が増えても、教育を担う人が現場を離れれば短期の配置余力は変わる。共同教育や現場での支援を考えるなら、受講者だけでなく指導者の時間も含めて確かめる必要がある。全国の年齢比率、業者の規模、現場の時間を順に分けることで、受入れ賛否だけでは見えない実施条件を議論できる。これは統計と会合の論点から導く編集部の分析で、政策の効果や個々の現場を実測した結論ではない。
訂正・補足(2026年10月10日):2027年年初の取りまとめを求めた発言者は国家公安委員会委員長ではなく警察庁長官であり、原文に合わせて訂正した。平均と中央値の区分、業者数の割合と警備員数の割合を区別。年齢構成、純増、制度の検討を退職予測や受入れ決定と混同しない。従来の注意を保持し、合計・割合・平均・中央値の区分は編集部計算、配置の時間例は検討用の設定で法令上の基準ではない。
更新(2026年10月6日):警備業への外国人材の受け入れを扱った関連記事1本の内容をこの記事に統合し、本文を書き改めました。検討会の論点と、業務ごとに求められるものを加えました。
訂正(2026年10月3日):年齢別の実人数は原表に掲載されていました。「公表資料には実数の記載がない」とした旧稿の説明と、60歳以上の割合などの数値を原表に合わせて訂正し、補充期間の計算と断定的な評価を削除しました。
[文・構成=編集長 麻生 矩暉]
出典とメモ
- 警察庁:令和7年における警備業の概況。本文1~3ページ(PDF3~5ページ)の総数・年齢・業者規模を紙面確認し、比較表を作成。282,509人・47.3%・1.98倍・平均54.5人、中央5475番目と累計4085・6216による中央値の区分は原表を基にした編集部計算。正確な中央値は未取得。人数、業者数、勤務時間は異なる単位である。
- 同:警備業への外国人材の受入れに関する検討会。公表中の議題と第1回へのリンクを確認。検討を受入れ決定や制度の開始としない。
- 同:第1回議事要旨。全5ページを紙面確認し、日時、制度枠組み、日本語・技能、事業者の体制、現状把握の論点を確認。各意見を総意や既定の基準として扱わない。
- 9月10日の国家公安委員会委員長・警察庁長官記者会見要旨。長官への質問と回答で、保安職業の指標、二制度の対象化の検討、2027年年初の取りまとめの目安を確認。採用・離職の全実績、職種別の最新求人原表、退職予測、各現場の安全性、制度の効果は未検証。配置20人相当・約26.7人相当は架空の条件による説明で、法的助言や実際の配置計画ではない。














