2026年9月のフラット35で示された年3.46%は、全ての利用者が同じ条件で借りる金利ではない。借入期間、融資率、団体信用生命保険、金利引下げの条件をそろえて読む必要がある。さらに、固定と変動の金利差を日銀の利上げ回数へ直すだけでは、総返済額の優劣は決まらない。金利がいつ変わるか、その時点で元本がいくら残るかも影響する。公式表示と契約の仕組みを確認し、将来予測ではない条件計算として、返済額の変わり方を整理する。
1. 最頻金利は、全員の金利や借りた人の平均ではない
公式サイトの9月表示では、借入期間21~35年、融資率9割以下、新機構団信付きの最頻金利が年3.46%であった。ここで最頻とは、金融機関の提供する金利で最も多いものを指す。融資を受けた人の平均金利、全商品の最高値、利用者の多数が実際に借りた金利とは区別する。
現在の公式金利ページは10月へ更新されている。本稿では、検索取得できた公式の9月表示と、10月1日付の公式推移図に残る9月の最低3.46%・最高5.69%を確認した。推移図は最低・最高を示すもので、最頻値を独立に示す図ではない。9月の数字を今日の申込みにそのまま使わないことも重要だ。
公式条件では、金利は金融機関が決め、借入期間、融資率、団信の種類などで異なる。融資率は住宅の建設費・購入価額等に対する借入額の割合である。ある条件の表を、頭金や保険の条件が違う契約と並べれば、見た目の差に含まれるものが変わる。
2. 当初5年の引下げと、全期間の通常金利を分ける
公式の9月表示にある当初5年2.46%、6年目以降3.46%は、計4ポイントによって当初5年間を年1.0ポイント引き下げた例である。全ての利用者が最初の5年に2.46%となるわけではない。住宅性能や家族構成等の条件を満たすか、どの期間に引下げがあるかを別に確認する。
資金受取時に終了までの条件を見通せることが全期間固定型の特徴だが、あらかじめ予定された引下げ終了で返済額が変わる場合はある。固定だから常に同じ額という説明も、引下げ適用の有無を添えなければ不十分になる。
また、適用金利は申込時ではなく資金受取時の金利である。申込みから受取りまで月をまたぐ場合に、最初に見た表示が保証されるとは限らない。比較するなら申込日だけでなく、受取時期、手数料、団信の内容、段階的な引下げを同じ紙面に置きたい。
3. 2.23ポイントを9回にしても、損益分岐点にはならない
旧稿は3.46%と約1.23%の差2.23ポイントを0.25で割り、8.92、約9回の利上げ後に変動が不利になると説明した。しかし政策金利と個別の適用金利は同一ではなく、政策変更の回数が返済総額の損益分岐点になるわけではない。この結論は撤回する。
同じ2.23ポイントの上昇でも、借入直後に起きる場合と、元本が減った20年後に起きる場合では利息への影響が違う。金利が同じ水準に一度達したことと、それ以前を含む総返済額が逆転したことも違う。到達する金利だけではなく、期間と残高の道筋が要る。
固定と変動の比較に平均値を使う場合も、その平均の対象、優遇条件、保険、手数料がそろっているかを確認しなければならない。本稿では旧稿の銀行別平均や最高値の全系列を再照合できていないため、1.23%は実際の商品を代表する値ではなく、次の試算用の仮定とする。
4. 3500万円の試算は、金利の道筋を明示する
編集部の元利均等計算を基に作成。420回、ボーナス・繰上返済なし。手数料・税・団信上乗せ・金利引下げを除く。3行目は120回後に残り300回で即再計算し、5年・125%ルールを適用しない架空の条件。
| 仮定・3500万円35年 | 毎月返済の概算 | 返済総額の概算 |
|---|---|---|
| 3.46%が全期間続く | 143,842円 | 6,041万円 |
| 1.23%が全期間続く | 102,596円 | 4,309万円 |
| 1.23%で10年、以後3.46% | 最初102,596円/以後132,022円 | 5,192万円 |
毎月返済額は、元本P、月利r、回数nとしてP×r÷{1-(1+r)の-n乗}で計算した。全期間3.46%と1.23%の差は月約4万1246円、総額約1732万円となる。ただし低い金利が35年続くという仮定の差であり、将来払うことが確定した保険料や、変動を選ぶ利益ではない。
3行目では10年後の残高を約2648万円として再計算する。残り25年を3.46%にしても、総額は最初から3.46%の場合より約850万円少ない。この例は未来予測ではなく、最終的な金利が同じでも上昇時期で総額が変わることを示す。反対の順序や異なる時期なら別の結果となる。
5. 金利見直しと、返済額見直しは別の日になり得る
三菱UFJ銀行の契約者向け案内では、変動金利・元利均等返済に5年ルールと125%ルールがある。金利が変わっても返済額の次の見直しまでは額が変わらず、見直し時の増額には上限がある一方、利息と元金の内訳は変わる。元金均等返済には両ルールがないとの説明もある。
ただし、これは全銀行共通の法定ルールではない。SBI新生銀行の公式案内は、元利均等の変動金利でも5年ルールを設けない金融機関があると説明している。自分の契約を確認せず、返済額が5年動かないことを前提に比較しないほうがよい。
返済額の据置きは利息の免除ではない。銀行の説明では、利息が返済額を超える場合に未払利息を繰り延べることもある。逆に、利息の比率が増えた全ケースで未払利息が発生するわけでもない。元金の減りが遅い状態と、利息自体を払い切れていない状態を区別したい。
6. 初期の利息が大きい理由は、残高にある
3500万円、35年、年1.0%一定という別の仮定では、月返済は約9万8800円、全期間の利息は約649.6万円となる。最初の120回の利息は約307.2万円で、全利息の約47.3%を占める。初回利息は元本×0.01÷12=約2万9167円、120回目は約2万1911円である。
毎月返済は元金と利息の合計で、利息はその時点の残高にかかる。初期に利息が多いのは、金融機関が勝手に前半へ利息を集めたという意味ではなく、残高が大きいためだ。この計算は1.0%の一定条件だけの割合で、金利が変動すれば47.3%は維持されない。
旧稿の残高3000万円・残り30年の比較も検算すると、0.70%と0.95%をそれぞれ一定と置いた月返済差は約3391円となる。しかしこれは返済額を再計算する仮定であり、政策金利の0.25ポイントが全ての契約へ同時に移ったり、翌月の引落額がその額だけ増えたりする意味ではない。
独自の視点――一つの金利差ではなく、三つの日付をそろえる
編集部は住宅ローンの比較を、資金を受け取る日、適用金利が変わる日、返済額を見直す日の三つから整理したい。フラット35の当月表示を見た日と受取日は違い得る。変動型では適用金利と返済額の変更日も違い得る。この時間差を落とすと、広告の数字と実際の家計の動きがつながらない。
金利差に何回の利上げを当てはめるかより、同じ残高・期間の条件で、いつ金利を変えると返済額と残高がどう動くかを確認するほうが検証可能になる。今回の10年後上昇の例も、その順序を見せるための設定だ。一定金利の総額、途中変更の総額、契約の返済額制限は別の欄に置くべきである。
どちらの方式が適するかを本稿が一律に決めるものではない。収入・支出、資金受取日、保険、手数料、変更条件をそろえたうえで、借入先や必要に応じて専門家へ相談する。固定を安心料の値段、変動を利上げ回数の賭けに単純化せず、見通せる条件と不確かな条件を分けることが比較の出発点になる。
訂正・補足(2026年10月10日):9月の表示を現在の適用金利とはしない。最頻金利の条件、計4ポイントの当初5年引下げ、資金受取時の金利を明記した。金利差を日銀の利上げ9回へ置き換えて変動有利とする結論、試算差を確定した保険料とする説明を撤回。5年・125%ルールを全契約に一般化せず、未払利息と元金減少の遅れを区別した。銀行平均・集計開始以来最高値・長期金利の背景・将来予想は今回の独立照合が未完了であり、本文の判断根拠には使わない。
本稿は一般的な制度情報と条件計算であり、特定の金融商品の選択、借入れ、借換えを推奨するものではない。実際の条件は契約書・借入先の案内で確認する。
更新(2026年10月6日):住宅ローン金利を扱った関連記事2本の内容をこの記事に統合しました。日銀の9月の利上げ後に、変動金利の契約で金利と返済額がどう変わるかと、残高3000万円の試算を加えました。
[文・構成=編集長 麻生 矩暉]
出典とメモ
- 住宅金融支援機構:新規借入れの案内。検索結果に残る公式9月表示で3.46%、計4ポイントの2.46%・3.46%の例を確認。直接開いた現ページは10月表示に更新されているため、9月のページ現物を再取得できたとは扱わない。公式金利推移の10月1日付全1頁を紙面確認し、9月の最低3.46%・最高5.69%を照合。図は最頻値を示すものではない。
- 公式利用条件、融資率の説明、公式金利情報の集計注記。期間・融資率・団信、金融機関の商品報告、資金受取時の適用を確認。引下げ・全費用を含む個別総額は未計算。
- 三菱UFJ銀行:契約者向け金利・返済ルール、SBI新生銀行:5年・125%ルールの説明。採否・返済方式・利息内訳を確認。各銀行の全商品・全契約を網羅した比較ではない。
- 試算表は本文の元利均等式を基に編集部作成。月単位で計算し表示のみ四捨五入、手数料・保険差・税・引下げ・繰上返済を除く。途中変更では120回後残高を計算し300回へ再配分、5年・125%制限を除く。将来金利、個別家計への適否、銀行平均の全原表、政策金利から契約への全転嫁、国債相場の因果要因は未確認。三つの日付による比較は編集部の分析である。














