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経常利益44兆6668億円と設備投資1.6%増 率の差で行き先は分からない

工場設備と無地の会計資料ファイルを描いたAI生成イラスト。利益から設備投資への資金配分を示す図ではない

企業の経常利益は44兆6,668億円、設備投資は13兆250億円。2026年4〜6月期の法人企業統計は、利益の伸び24.6%に対し、設備投資の伸びが1.6%だった。二つの率の差は23.0ポイントである。ただし、その差がそのまま賃金や配当へ回ったとは分からない。財務省の公式表を業種とソフトウェアの有無で読み分け、利益と投資を結ぶ議論のどこまでが事実なのかを確かめる。

1. 過去最高の範囲と、調査の対象を確認する

財務省が9月1日に公表した四半期別法人企業統計は、資本金など1,000万円以上の営利法人等の仮決算を標本から集計・推計する調査である。本稿の全産業は金融業・保険業を除く。小規模な法人や個人事業まで全てを合計した日本の企業全体の利益とは同じではない。

公表資料は経常利益44兆6,668億円を、1954年4〜6月期以降の289期の中で1番目とする。設備投資はソフトウェアを含む13兆250億円で、2001年7〜9月期以降の100期の中では26番目だ。順位の対象期間が異なるため、同じ長さの歴史で比べた順位と説明しない。

季節調整した前期比では経常利益11.0%増、設備投資1.5%増である。前年同期比の24.6%と1.6%は1年前との比較、前期比は直前の四半期との比較だ。どちらもプラスだが、同じ問いに答える数字ではない。旧稿の「利益は設備に向かっていない」という書き方は、実際に投資額が増えた事実まで否定するように読めるため改める。

2. 製造業では利益が増え、投資が減っている

財務省・2026年4〜6月期法人企業統計の第3表・第5表を基に作成。金融・保険を除く、投資はソフトウェアを含む。公表金額は億円単位の概数で、内訳の和と総額に差が生じ得る。

区分経常利益利益の前年同期比設備投資投資の前年同期比
全産業446,668億円+24.6%130,250億円+1.6%
製造業176,875億円+57.0%46,022億円−3.7%
非製造業269,792億円+9.8%84,228億円+4.7%

全産業だけなら利益も投資も増えているが、製造業は利益57.0%増と投資3.7%減が並ぶ。非製造業は利益9.8%増、投資4.7%増である。この違いを隠して、国内の企業が一斉に投資を控えたとまとめることはできない。増益が大きい業種と、投資を増やした業種が同じかを確認する必要がある。

例えば情報通信機械の経常利益は171.2%増、設備投資は29.3%減である。一方、化学の経常利益は43.2%増、投資は11.0%増だった。同じ製造業の中でも方向が異なる。会社ごとの対応まで確認したわけではないが、集計を一段下げるだけで、全産業の平均だけでは見えない違いが現れる。

全産業の二つの伸び率の差24.6-1.6=23.0ポイントは、比較の記述には使える。ただしそれぞれの率は前年の利益と前年の投資という異なる分母を持つ。この23ポイントを、投資に回らなかった利益の割合や、どこかへ移った現金の量へ読み替えない。

3. ソフトウェアを除くと、投資は3.6%増だ

第5表にはソフトウェアを含む額と、除く額が併記されている。全産業の投資は含む場合13兆250億円・1.6%増だが、除く場合11兆5,141億円・3.6%増である。設備投資の見出しに使う率がどちらなのかで、読者が受け取る構図が変わる。

公表額を引くと、当期のソフトウェア分は130,250-115,141=15,109億円、前年同期は128,214-111,098=17,116億円となる。差は2,007億円の減少で、前年の額で割ると約11.7%減だ。これは億円単位の公表値からの編集部計算で、各企業の回答を再集計したものではない。

投資全体の増加2,036億円は、ソフトウェアを除く部分の増加4,043億円と、ソフトウェア分の減少2,007億円の和として確認できる。従って全体の1.6%増だけから、工場や機械への投資がほとんど増えていないと結論するのは粗い。ソフトウェアを除く部分にも建設仮勘定などが含まれ、機械だけの数字ではない点にも注意が必要だ。

財務省の定義によれば、四半期の設備投資は固定資産へ新たに付加された額で、建物の新増築や新しく生産された機械装置の購入などを含む。将来の投資計画や契約総額を全て表すものでも、既存資産の市場価格の上昇をそのまま足したものでもない。何を数えるかをそろえてから比較する。

4. 経常利益は、自由に使える現金ではない

経常利益は損益の計数で、売上げが全て入金された現金の残高とは違う。利益と設備投資の金額を引き、残りが配当、自社株買い、賃金、内部留保のどれかに回ったとする旧稿の説明を撤回する。資金の行き先を追うには、税、資金調達、運転資金、取得資産なども確認する必要がある。

とりわけ賃金は、経常利益が出た後で同じ箱から振り分けるものとしては扱えない。財務省の用語説明は、役員給与・従業員給与を売上原価と販売費・一般管理費に含まれる額の合計とする。賃金の増加は費用を通じて利益にも関係するため、投資に回らない利益が自動的に賃金になるという帳尻は成り立たない。

内部留保も、その額がそのまま金庫や預金に保管された現金であるという意味ではない。利益の蓄積がどの資産や負債の変化と対応するかは貸借対照表などで追う必要がある。今回、全社の配当や自己株式取得、現預金、利益剰余金の増減を照合したわけではなく、「利益はどこへ行ったか」に対する配分の答えは確定しない。

輸送用機械では経常利益が50.6%増なのに対し、営業利益は20.3%減である。経常利益と営業利益の対象が違うことを示す例になるが、この差だけで円安の換算効果が主因と決まるわけではない。海外の収益、受取配当や利息などの内訳を別途照合せず、増益全体を販売数量や値上げの成功だけで説明しない。

5. 数字の差から、投資を控えた理由は決まらない

建設費、人材、借入条件、将来需要などは投資判断の検証材料になる。しかし全体の利益と投資の伸びが違うだけでは、どの要因がどれだけ投資を遅らせたかは分からない。今回は各社の計画や受注、資金制約を照合していないため、建設費高騰や金利上昇が今回の低い伸びの原因だとは断定しない。

4〜6月期は標本の抽出替えがあることにも注意が必要だ。財務省は新設・増資した法人が含まれるなどの事情で、前期との単純な連続比較が難しいと説明し、継続標本による増加率も別に公表する。集計上の変化を全て同じ企業の行動変化と読まない。

法人企業統計はGDPの改定を考える材料になるが、その設備投資の前年同期比を、そのままGDPの実質成長率や改定幅へ置き換えることはできない。今回はGDP2次速報の原資料を再照合していないため、旧稿の「上方修正の可能性が高い」という公表前の見通しを、現在の確認済み結論として残さない。

独自の視点――利益の行き先より先に、同じ物差しを作る

編集部は、利益と投資の伸びが離れたときほど、すぐに配分を推測するのではなく、業種、会計項目、集計範囲をそろえることが有用だと考える。製造業と非製造業、ソフトウェアを含む投資と除く投資を比較しただけでも、全産業1.6%という数字の中に複数の動きが見つかった。これが本稿の独自の整理である。

次に資金の行き先を追うなら、同じ企業群で損益、投資、現金や借入れの増減、株主への支払いをつなぐ必要がある。その際も、給与を利益の残りとして足し込まず、すでに費用に含まれたことを守る。この順番なら、統計の差を埋めるために存在しない資金の移動を作らずに済む。

利益が最高だから生活も改善した、投資の伸びが低いから企業が怠ったという評価は、今回の集計だけでは支えられない。強い利益と投資の違いを出発点にし、どの企業で何が起きたかへ進む。平均の華やかさも、低い伸びへの不満も、確かめられる問いへ戻すことが重要だ。

訂正・補足(2026年10月11日):旧注意の標本・仮決算に基づく推計である点を保持。財務省9月1日資料で利益446668億円/24.6%、投資130250億円/1.6%を照合し、伸び率差を23.0ポイントと訂正。投資を控えた原因や利益の行き先を率の差から断定した説明を改めた。賃金は利益計算前の費用に含まれること、利益剰余金と現金の違い、ソフトウェアを除く投資3.6%増を補足。GDP改定の公表前予測、為替・値上げを増益の主因とした説明は今回原資料で再検証していない。

本稿は情報提供を目的とするもので、特定の銘柄の売買を推奨するものではない。

[文・構成=編集長 麻生 矩暉]

出典とメモ

  • 財務省・2026年4〜6月期四半期別法人企業統計の1/5/7/16ページを紙面で確認。比較表は第3・5表を基に作成。第2表の輸送用機械の営業利益-20.3%も本文抽出で照合。金融・保険除外、ソフトウェア含有、1000万円以上、仮決算/標本推計を区別。289期/100期の順位範囲を保持。
  • 財務省・結果と用語説明で給与の費用扱い、投資定義、標本替えの注意を確認。24.6-1.6=23.0、130250-115141=15109、128214-111098=17116、差-2007/前年17116=約-11.7%、全投資差2036=非ソフト差4043+ソフト差-2007を再計算。丸め済みの公表値の計算で全個票再集計ではない。
  • 旧出典の日経、ロイター配信、ニッセイ基礎研究所、日本総研は履歴として保持。今回全報道・各社決算・持株会社除外系列・営業外損益・配当/自己株式/現金/利益剰余金・GDP改定原本・継続標本・因果効果を完全検証したものではない。2026年10月11日確認。最後の節は編集部の比較と検証提案で、企業取材の結果ではない。