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結婚意思が初の8割割れ 6ポイント台の低下と、変わり得る条件を読む

街を望む二つの空席で生活の選択を象徴する概念イラスト

2025年6月の出生動向基本調査で、18~34歳の未婚者のうち「いずれ結婚するつもり」は男性75.1%、女性77.8%となり、男女とも8割を下回った。2021年から男性6.3、女性6.5ポイントの低下である。ただし、これは同じ人を4年間追って意思の変化を測った数字ではない。「結婚しない」という回答も、生涯の行動を確定するものではない。国立社会保障・人口問題研究所の9月11日公表資料から、意思、条件、希望の集計範囲を分けて読む。

1. 有効票6756と、若い未婚者3459人は別の数

独身者調査の対象は18歳以上55歳未満、夫婦調査は妻が55歳未満の夫婦で回答者は妻である。全国1000調査区を選び、2025年6月30日現在の事実を尋ねた。独身者調査の有効票6756、夫婦調査5024を、そのまま結婚意思の図の分母にすることはできない。

独身者には離別・死別などの配偶関係も含まれる。結婚意思の図表1-1は18~34歳の未婚者に限り、2025年の客体数は男性1676、女性1783、合計3459である。調査全体の対象、回収された有効票、ある質問の集計対象を三つに分ければ、旧稿の「未婚者6756人」という説明が広すぎたことが分かる。

今回からオンライン回答も可能となった。独身者調査の有効回収率は42.7%で、前回55.9%より低い。これは結果を無効とする理由ではないが、回答しなかった人の意識まで全て直接観測できたわけではない。年齢・性別の範囲に加え、回答方法や回収状況も比較の条件として残したい。

前回はコロナ禍で2020年の予定から2021年へ延期され、今回まで4年間だった。資料は過去の値も今回と定義をそろえた変数で集計し、以前の報告値と僅かに異なる場合があると注意する。同じ調査名でも、古い概要と今回の比較値を無条件に混ぜない。

2. 6ポイント台の低下は、年ごとの速度ではない

社人研「第17回出生動向基本調査 結果の概要」図表1-1・1-5を基に作成。調査間の表示値の差で、同一回答者の変化や毎年の低下幅を測った表ではない。

18~34歳未婚者の回答2021年2025年表示値の差・編集部計算
男性・いずれ結婚するつもり81.4%75.1%-6.3ポイント
女性・いずれ結婚するつもり84.3%77.8%-6.5ポイント
男性・結婚に利点がある63.3%56.3%-7.0ポイント
女性・結婚に利点がある70.9%63.4%-7.5ポイント

差を4で割れば男性1.575、女性1.625ポイントとなる。しかし、それは二時点の差を年数で均した計算にすぎない。2022年、23年、24年にも同じ速さで下がったという観測ではなく、そのまま次の4年へ延長する予測でもない。旧稿の「年に1.6ポイント前後のペース」は、この限界を示さず使うべきではなかった。

「一生結婚するつもりはない」は男性24.0%、女性21.5%である。男性の75.1と24.0、女性の77.8と21.5を足しても100にはならず、図には不詳の区分もある。結婚する意思がある割合を100から引いた全てが、結婚意思のない割合というわけではない。男女差2.5ポイントも、この質問の回答割合の差であり、生涯未婚率の男女差ではない。

図には95%信頼区間も示されている。ここでは公表値の差を再計算したが、標本誤差や回答の偏りを含む全ての不確実性を独自に推定したわけではない。小数1桁まで数字があることと、全人口の割合をその精度で確定できたことを同一視しない。

3. 結婚しない回答にも、変わる余地がある

図表1-11は「一生結婚するつもりはない」と答えた人に、今後意思が変わる可能性を尋ねる。「あると思う」と「あるかもしれない」を合計すると、男性は9.9+29.8=39.7%、女性は11.2+35.8=47.0%である。元の回答が将来の確定的な宣言とは限らないことが、質問を重ねると見えてくる。

ただし、39.7%や47.0%は結婚を望まないと答えた人の中での割合だ。全未婚者の4割や5割が結婚へ転じるという意味ではなく、その割合の人が実際に後から結婚したという追跡結果でもない。意思が変わる可能性と、機会が訪れて行動することの間には、なお段階がある。

意思が変わる場合の理由も尋ねられているが、その質問には「たぶんないと思う」を選んだ人も含まれる。資料は、相手が現れることや収入・貯蓄の増加などを示す。ここから収入を増やせば必ず結婚するという政策効果を推定するのではなく、どんな条件なら考えが変わり得るかを探る手がかりとして読む。

4. 結婚の利点の低下を、原因の確定にしない

利点があるという回答は男性56.3%、女性63.4%で、前回より7.0、7.5ポイント低下した。ただしこれは、結婚の損得を金額で測った指標ではない。設問は今の自分にとって結婚することにどんな利点があるかを尋ねる。回答者の認識を、家計全体への客観的な利益や不利益と置き換えない。

結婚意思と利点の回答が同時に低下したことは、二つの時系列の共通した動きである。しかし、利点を感じなくなったことが結婚意思の低下を何ポイント生んだかは、この表だけでは分からない。年齢構成、仕事や生活、相手の有無などをそろえた分析をせず、並んで動く二つの数字から原因の方向を決めることは避けたい。

5. 希望子ども数は、誰を含めるかで変わる

図表3-4の「いずれ結婚するつもり」と答えた18~34歳未婚者の希望子ども数は、男性1.64人、女性1.70人である。今回資料で比較用に示す2021年値は男性1.83、女性1.79だから、低下は0.19人と0.09人になる。旧稿で今回の具体値を未確認とした注意は、資料を確認したうえで補う。

結婚意思がない人も含む全未婚者では男性1.30、女性1.36人である。1.64と1.70を「未婚者全体の平均」として使うことはできない。また、希望子ども数不詳を除いた同図の客体数は、結婚意思のある男性1247・女性1367、全未婚者は男性1637・女性1745で、先ほどの結婚意思の図の人数とも違う。

注記では、希望数5人以上を5として計算し、不詳の処理を今回に合わせて前回値を再集計したため、第16回男性の値が更新されたとする。旧第16回概要の1.82と今回比較値の1.83の違いを、単なる写し間違いと片づけない。希望の水準を比べるなら、定義と処理をそろえた今回資料の前回値を用いる。

この希望数を夫婦当たりの実際の出生数や合計特殊出生率と直接比較して、希望がかなっても必ず人口が減ると断定した旧稿も改める。回答対象も、分母も、期間も違う。将来人口の判断には死亡や移動なども関わり、若い未婚者の希望平均一つから将来人口や保険料率を機械的に算出したことにはならない。

6. 相手への条件は、男女とも上昇したわけではない

図表3-3では、結婚意思のある18~34歳未婚男性が相手の経済力を重視・考慮する割合は48.2%から55.6%へ7.4ポイント上がった。一方、同じく結婚意思のある未婚女性が相手の家事・育児の能力や姿勢を重視する割合は70.2%から68.4%へ1.8ポイント下がった。旧稿の両側から条件が上がったという説明は今回との比較では成り立たない。

二つの指標は、男性側が「重視または考慮」、女性側が「重視」という違いもある。これらを一つの要求の厳しさの点数のように比べない。相手の経済力や家事能力を求めることが正当か不当かという価値判断とも別だ。複数の条件を同時に満たす相手の数や、それが結婚意思を下げた効果まで、この集計から算出できたわけではない。

独自の視点――変えない意思と、変えられない条件を分ける

編集部が重視するのは、低下を若者の意欲不足とだけ名付けないことだ。結婚を選ばない意思を尊重することと、望む人が障害によって実現できない状態を減らすことは両立する。75.1%や77.8%がなお結婚する意思を示す一方、その意思も相手や生活の変化で揺れ得る。選択と制約を同じものにすると、必要な対応を見失う。

検証するなら、意思の有無だけでなく、考えが変わる可能性、どんな条件を挙げたか、実際に生活条件や出会いがどう変化したかを順に追いたい。例えば収入の変化を比べる場合も、年齢や働き方が違う集団の平均をそのまま比べず、同じ条件で経過を確かめる必要がある。これは編集部の検証案で、本調査がその政策効果まで証明したという意味ではない。

「初の8割割れ」は変化を知らせる見出しにはなるが、8割という境目自体が政策の成否を決めるわけではない。誰を数え、何を聞き、どんな意思の余地が残るかを示すほうが、希望に介入せず支援を考えられる。変わる可能性を理由に全員を結婚へ促すのでも、今の回答を固定して支援を諦めるのでもない。その間を丁寧に読むことが、調査を生活につなげる視点である。

訂正・補足(2026年10月10日):旧注意欄で未確認とした実施月を2025年6月、6月30日現在と確認し、今回の希望子ども数を補った。有効票6756は若い未婚者の集計人数ではない。2021年男性希望数は今回の処理に合わせた1.83を用い、旧概要1.82との差の注記を示した。年1.6ポイントを一定速度とする説明、男女の条件がともに上がったとの説明、希望数から人口減少や社会保障の数値を直接確定する断定を改める。回答と生涯行動・因果を区別する。

[文・構成=編集長 麻生 矩暉]

出典とメモ

  • 社人研:第17回出生動向基本調査結果と結果の概要、2026年9月11日公表。紙面17~19頁の調査概要・図表Ⅰ~Ⅳ、25頁図表1-1、29頁1-5、35~36頁1-11・1-12、47~48頁3-3・3-4を確認。表と計算はこれらを基に作成。ページは紙面番号で、PDF通し番号とは2頁ずれる。
  • 第16回調査の概要ページ。2021年6月実施、コロナによる延期、旧男性希望数1.82を確認。比較値は第17回の再集計値を優先する。
  • 旧補助出典の日経と毎日の配信記事(旧掲載先は2026年10月13日確認時点で閲覧不可)は参照履歴として保持。今回は社人研資料を根拠とする。差や比率は表示値からの編集部計算。個票の再分析、全ての標本誤差・非回答偏り、同一個人の意思の追跡、原因の寄与分解、将来の結婚・人口や保険料の予測は行っていない。最終節は編集部の分析・検証案である。