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「2万5236件」生活保護の申請は増えたが、保護の開始は2.5%減った

机に置かれた記入用紙と封筒、家族のシルエットを配したAI生成イラスト

厚生労働省が2026年10月7日に発表した7月の生活保護の申請件数は、全国で2万5236件だった。前年の同じ月より0.6%増え、2か月連続の増加で、NHKによれば直近10年の7月では2番目の多さにあたる。一方、7月に保護を受け始めた世帯は2万170世帯で、2.5%減っている。申請は増えたのに、開始は減った。物価高のなかで、この二つの数字をどう読めばよいのか。

1. 生活保護の申請件数とは何か?

生活保護の申請とは、保護を求めて実施機関に出す手続きである。申請件数は、その月の申請という手続きの数であり、窓口へ相談に来た人数や生活に困っている人の総数ではない。保護を開始した世帯数とも集計段階が違う。入り口と開始後の数字を別々に見る必要がある。

2. 7月に何が起きたか

NHKによると、7月の申請は全国で2万5236件で、前年同月比0.6%の増加。増加は2か月連続だ。直近10年の同じ月で比べると、2番目に多い水準になる。厚労省の担当者は、増加幅は大きくないとしたうえで、今後の動向を引き続き見ていく考えを示した。

申請件数は月ごとに上下する。一月の増減だけで傾向を決めつけず、数か月の並びで見るのが基本だ。2か月連続の増加という事実は、その並びを読むための最初の手がかりになる。

3. 0.6%増を実数にすると

厚労省の公表表で前年7月は2万5085件、今年は2万5236件であり、増加は151件である。丸められた0.6%からの逆算ではなく実数で確認した。151÷25085×100=約0.602%で、公表値0.6%とも整合する。7月の31日で割ると申請は約814件/日、増加分は約4.9件/日となる。ただし窓口の開庁日当たりの件数ではなく、暦日で均した説明用の計算である。

もう一つ押さえておきたいのは順位である。前年比の伸びは小さくても、直近10年の7月で2番目に多いということは、申請が高い水準で続いていることを示す。小幅の増加と、高止まりは、同時に成り立つ。

4. 申請は増え、開始は減った。矛盾なのか?

厚労省の表では前年の開始は2万692世帯、今年は2万170世帯で、522世帯減少した。522÷20692×100=約2.523%で、丸めると2.5%減になる。従来の逆算による前年約2万687世帯、差約517世帯という記述を、公表実数に訂正した。

ただし、この二つは単純に引き算できない。単位が「件」と「世帯」で違い、同じ人の流れを追った数字でもないからだ。申請から決定までには審査があり、法律上は原則14日以内、特別な理由があれば30日まで延びうる。7月に出た申請の一部は、8月に開始になる。目安として、開始世帯数は申請件数の約8割にあたる(編集部による概算)が、これは同じ人を追った割合ではない。

5. 受給している世帯と人数は?

以前から保護を受けている世帯を含めた受給世帯数は、7月は164万4,102世帯で、前年同月比0.2%減った。受給している人数は196万9,655人で、総人口の1.6%にあたる。およそ60人に1人の計算だ(編集部による概算)。1世帯あたりに直すと約1.2人で、一人暮らしなどの小さな世帯が多いことがうかがえる。

世帯数は減っているのに、申請は高い水準にある。入り口は動いているのに、受給の総数は大きく動いていない。ここが、今回の数字の読みどころだ。

6. 物価高でも急増しないのはなぜか?

資料からは、理由を断定できない。厚労省の担当者も、増加幅は大きくないという見方にとどめている。一般論として、申請の数は困窮の深さだけで決まらない。窓口に行く決心、制度についての知識、他の支援を使えるかどうかにも左右される。申請しない人の中にも困窮している人がいる可能性は、数字の外側にある。ここでは、数字から読み取れる範囲にとどめる。

物価との因果関係も、この月次集計だけでは確定できない。全国の7月の申請と東京だけの9月のCPIを並べても、地域と時点が異なるため、生活保護申請への影響の検証にはならない。物価高が家計を圧迫するという一般的な論点と、今回の申請増を物価が引き起こしたという断定は分ける。因果を調べるには、同じ地域・時期の所得、雇用、生活費、制度利用の状況などを追加して検討する必要がある。

7. 次に見るべき数字

次に見るのは、来月発表される8月分の申請件数だ。前年比の伸びが3か月続くのか、止まるのかで、7月の増加の意味が決まる。もう一つは、開始世帯数が減少をどこまで続けるかである。国会では、住民税非課税世帯など低所得層への給付が論点になっている。生活保護の数字は、その手前で困窮がどう推移しているかを映す鏡の一つだ。

小さな増加の裏にある、高止まりと開始の減少。この二つの組み合わせを、私たちは数か月かけて確かめることになる。

独自の視点――8.0割という比率を「認定率」と呼べない理由

開始世帯数20170を申請件数25236で割ると約79.9%になる。しかし、この月に申請した世帯を追跡して、何世帯が認定されたかを集計した割合ではない。7月の開始には前の月に申請した世帯が含まれうるし、7月の申請には後の月に結論が出るものがある。集計対象の単位と期間がそろっていない比率から、「約2割が却下された」と解釈するのは誤りだ。申請が増えて開始が減ったことだけで、審査が厳しくなったとも断定できない。

厚労省「2026年7月分概数」公表表を基に作成

項目前年7月2026年7月差
申請件数25,085件25,236件+151件
開始世帯数20,692世帯20,170世帯−522世帯
被保護実世帯数1,647,618世帯1,644,102世帯−3,516世帯

この表の三行は、同じ制度の別の段階を見ている。申請は手続きの発生、開始は保護を始めた世帯、被保護実世帯は以前から受けている世帯も含む利用の規模である。どれか一つを「困っている人の数」と読み替えると、申請していない人や終了した世帯の動きが抜ける。申請151件増と総世帯3516世帯減を単純に相殺することもできない。違う集計の差には、それぞれ別の意味がある。

割合が小さいという評価にも注意がいる。申請の0.6%増は全国合計としては小幅だが、窓口ごとの負担や相談者の事情が均等だったとは限らない。31日で割った約814件という値は全国の規模感を示すための平均であり、特定の自治体で毎日同じ数の相談が発生したという意味ではない。平均を生活場面に翻訳することと、平均から個別の経験を推測することは区別したい。

人数と世帯数の比較にも同じ注意が必要だ。1969655人÷1644102世帯は約1.20人/世帯だが、この平均だけから単身者の構成割合を確定することはできない。人数の少ない世帯が多いことを示唆する指標ではあっても、具体的な世帯類型は分類表で確認する必要がある。公表表は保護停止中を含む総数と、停止中を除く世帯類型表も区別している。違う範囲の数を混ぜれば、計算自体が正しくても解釈はずれる。

今後の検証では、前年比だけでなく、同じ項目の実数、前月との差、複数月の並びを併せて読む。増加が続けば注目すべきだが、数か月続いたという事実だけで原因が確定するわけではない。申請が増えた理由を述べるには、申請理由や生活状況を示す別の調査が必要になる。今回の編集部の独自計算は、読者が発表資料の実数から伸び率を再現し、数字が何を示さないかも確かめられるようにした点にある。

訂正(2026年10月9日):厚労省の公表表を直接照合し、前年の開始世帯数を2万692世帯、減少数を522世帯へ訂正した。申請は151件増。丸めた前年比から逆算する方法を実数比較に変更し、申請件数と開始世帯数の比を認定率と誤解しない説明を補強した。

[文・構成=編集長 麻生 矩暉]

出典とメモ

厚生労働省「被保護者調査 2026年7月分概数」報道発表資料の総数・申請件数・開始世帯数を照合。比較表は同資料を基に作成。前年比の検算と暦日平均は編集部の計算であり、認定率や因果関係を表すものではない。調査の用語解説と生活保護法も参照。