電気代を下げてきた補助が、2026年9月使用分で終わる。資源エネルギー庁の資料によると、7月から9月の補助は低圧の電気で1キロワット時あたり3.5円、8月だけは4.5円だった。夏のあいだ請求から引かれてきた金額が消えるのだから、10月使用分からは、同じ使い方でも値引き分だけ高くなる。この記事では、3.5円という小さな数字を、家計の単位に直して眺めてみる。
補助単価とは何か
補助単価とは、国が電気の使用量1単位あたりに出す補助の金額である。今夏の支援では、電力会社が料金からこの額を差し引き、国がその分を支える形がとられた。低圧とは、一般の家庭や小さな店舗が結ぶ電気の契約区分で、本稿が扱うのはこの単価である。資源エネルギー庁の資料は、財源に令和8年度一般会計予備費5,135億円を挙げている。予備費とは、予算に載っていない急な支出に備えて、あらかじめ積んでおくお金である。補正予算を待たずに動かせるのが、予備費の特徴だ。
3.5円を使用量に掛けると
キロワット時とは、電気の使用量を表す単位で、1,000ワットの機器を1時間動かした量にあたる。補助は、この使用量に単価を掛けて決まる。使用量が月250キロワット時なら3.5円で875円、300キロワット時なら1,050円、400キロワット時なら1,400円。いずれも編集部の概算で、契約内容によって細部は違う。ここで見たいのは金額そのものより、補助が使用量に比例するという点だ。たくさん使う世帯ほど、値引きも大きかった。逆にいえば、終了で戻る負担も、たくさん使う世帯ほど大きい。仮に使用量が月100キロワット時の世帯なら、値引きは350円にとどまる。一人暮らしと、家族の多い世帯とで、受けた恩恵に差があったことが分かる。
8月だけ1円多かったのはなぜか
低圧電気の8月単価は4.5円で、7月・9月の3.5円より1円高い。夏の使用量が増える時期の支援という趣旨は経産省の5月26日の説明でも示されている。ただし冷房需要が8月に必ず最大になるという個別の家計の推測はしない。300kWhなら8月1350円、7月・9月1050円で、同じ使用量での差は300円になる。
夏の3か月を足すと
夏の値引き総額は、7月使用量×3.5円+8月使用量×4.5円+9月使用量×3.5円で求める。毎月同じ使用量なら、250kWhで2875円、300kWhで3450円、400kWhで4600円となる。単価を足した11.5円は、同じ量を各月に使った場合の計算上の係数で、夏の総使用量1kWh当たりの補助単価ではない。月ごとの使用量が異なる家庭は各月を別々に掛ける。
補助は価格を下げたのか、請求を下げたのか
補助は、電気の価格そのものを下げたわけではない。国が差額を負担し、利用者の請求を軽くしたのである。この違いは、補助が終わった瞬間に見える。財源は予備費、つまり国の財政だ。3.5円の値引きは、誰かが別の形で負担している。家計の側から見れば請求が軽くなっても、国全体で見れば負担が移っただけ、という見方もできる。補助の是非は、この点をどう評価するかで分かれる。
値引きが消える請求は、いつ届くのか?
制度でいう9月使用分と、9月1日〜30日の暦日使用量は必ずしも一致しない。各社の検針期間に従うため、請求書では使用期間と料金月、値引きの対象月を併せて確認する。電気事業連合会の案内は、7月・9月使用分を8月・10月分料金、8月使用分を9月分料金と整理する。請求の到着日まで全世帯で同じになるわけではなく、「10月末〜11月に多い」という従来の推測は削除する。
秋からの請求書を、どう読むか
10月使用分からは、この値引きがつかない。これは電気料金そのものの値上げではなく、夏のあいだ下げられていた分が、本来の水準に戻ることを意味する。ただし、電気料金は燃料費調整という仕組みで、燃料の価格に応じて毎月動く。燃料費調整とは、輸入燃料の価格変動を、料金に自動で反映させる制度である。補助の終了と燃料価格の動きが重なれば、請求額の変化は3.5円ぶんより大きくも小さくもなる。請求書を見るときは、使用量、単価、補助の有無、燃料費調整の4つを分けて読むとよい。補助による値引きは、請求書に別の行で示されることが多く、その行が消えるかどうかが、いちばんはっきりした目印になる。
季節の面でも見ておきたい。冷房の季節が終われば使用量は減りやすく、10月は補助がなくなっても、夏ほどの差は出ないかもしれない。効いてくるのは、暖房で使用量が増える冬である。3.5円は、使う量が増えるほど重くなる数字だ。補助は、物価高から家計を守るための臨時の措置だった。終わりを迎える今、確かめるべきは、3.5円という単価と、自分の使用量の掛け算である。
都市ガスの値引きも、同じ時期に終わる
補助は電気だけではなかった。都市ガスにも、1立方メートルあたり7月と9月は14.0円、8月は18.0円の値引きがついていた。電気と同じく、9月使用分で終わる。
この支援は、利用者が申し込む必要のない仕組みだった。経済産業省は6月12日、大手電力10社、一般送配電事業者10社、都市ガス4社が約款より安い料金で供給できるよう、特例の認可と承認を行った。新電力なども自主的に値引きに加わった。一方、プロパンガスは対象外である。値引きは請求から直接引かれていたため、補助を受けていた実感を持たない家庭も多い。
世帯の使い方で見る、補助が消える額
7月と9月の単価(電気3.5円、都市ガス14.0円)で、補助の終了で戻る額を世帯の使い方ごとに計算すると、次のようになる(編集部の概算)。
| 世帯の例 | 電気の使用量 | ガスの使用量 | 月の値引き額 |
|---|---|---|---|
| 一人暮らし | 150kWh | ― | 525円(電気のみ) |
| 2〜3人世帯 | 350kWh | 30立方メートル | 1645円(電気1225円、ガス420円) |
| 4人以上の世帯 | 500kWh | 50立方メートル | 2450円(電気1750円、ガス700円) |
上表は世帯の典型的な使用量を調査した結果ではなく、仮の使用量を置いた計算例である。家族人数や年齢だけで消費量と影響額が決まるわけではない。在宅時間、設備、住宅の断熱、気温でも変わる。仮定した使用量での値引きと、個々の請求額を区別する。
9月使用分で、大手10社はすべて値上がりしていた
補助の終了を待たずに、料金はすでに上がり始めていた。大手電力10社が8月28日に発表した9月使用分の家庭向け料金は、標準的な家庭で252円から509円の値上がりで、10社すべてが値上げになった。最も上げ幅が大きいのは、液化天然ガス火力の比率が高い中部電力の509円だった。東京電力は432円上がって8275円になると報じられた。大手都市ガス4社も237円から307円上がった。
前月の8月使用分では、10社のうち8社が値下がりしていた。1か月で全社が値上げに転じた理由は二つある。電気の補助が8月の4.5円から9月の3.5円に縮んだこと、そして中東情勢を受けて液化天然ガスの輸入価格が上がったことである。10月使用分からは、この3.5円もなくなる。
独自の視点――請求額の変化を補助だけで説明しない
補助終了の影響を切り分けるなら、比較する月の使用量も固定する必要がある。例えば9月300kWh、10月250kWhという設定例では、値引きがなくなることと使用量が50kWh減ることが同時に起きる。10月の請求額が下がったとしても、補助終了の影響がなかったとは言えない。反対に請求額が上がっても、全額が補助終了のせいとは限らない。使用量、適用単価、燃料費調整、補助の四つを分けるのが、今回の計算を請求書に結び付ける方法である。
訂正・補足(2026年10月9日):夏の単価合計11.5円を、同じ量を各月に使う場合の係数と明記した。値引き終了後の請求到着日の推測を削除し、検針期間・使用分・料金月を分けた。世帯別の表は実測平均ではなく設定例である。
※本稿の金額は、使用量を仮に100・250・300・400キロワット時とおいた編集部の概算で、契約や検針日により実際の請求とは異なる。この冬の支援策は、執筆時点で確認できていない。
更新(2026年10月6日):電気・ガス代の補助を扱った関連記事3本の内容をこの記事に統合しました。都市ガスの値引き、世帯の使い方ごとの影響額、9月使用分の各社の値上がりを加えました。
[文・構成=編集長 麻生 矩暉]
出典とメモ
単価と使用分・料金月の対応は電気事業連合会の支援開始案内でも照合した。経産省の6月12日発表と5月26日会見の単価説明も確認。請求額の設定例はこれらの単価を基に作成した。各社の9月料金・予備費総額については、今回改めて直接照合した項目ではない。














